障がい者雇用の取り組み vol.005
2012/12/25

「24時間テレビを
放送し続けてきた
放送局として
やるべきこと」

プロフィール

日本テレビ放送網株式会社

人事局 人事部
担当部長(2012年11月30日現在)
山川 洋平

「24時間テレビ」の放送を通じ
障がい者の自立支援を訴える

昭和28(1953)年8月28日、日本テレビ放送網株式会社(以下、日本テレビ)は、日本初の民放テレビ局として誕生しました。以来およそ60年、日本テレビは常に「できないこと」へ挑戦し、それを「できる」に変えてきた歴史を有しそれを誇りにしています。

「できないことをできるへ」を代表する番組の一つが「24時間テレビ」です。昭和53(1978)年にスタートした「24時間テレビ」は、平成24(2012)年、35回目の放送を迎えました。この間、全国から寄せられた募金により贈呈された福祉車両は、1万台近くを数えています。

「街で、24時間テレビと記された福祉車両を見かけることがあります。そうしたときは、番組が社会に役立っていることを実感でき、とても嬉しいですね」。

人事局の山川洋平人事部担当部長は、頬を緩めてこう話してくれました。山川さんによると「24時間テレビ」の制作は、日本テレビの障がい者雇用に関する意識向上にも大きな影響をおよぼしているといいます。

「日本テレビは『24時間テレビ』を通じて、障がい者の自立支援を訴えています。とりわけ重要なのが、就業、つまり働く場の提供です。そうである以上、日本テレビ自身が障がいのある方の雇用に力を入れなければならない。この考えは、番組スタート当初から脈々と受け継がれてきています」。

「24時間テレビ」と障がい者採用との関連で、山川さんは次のようなエピソードを紹介してくれました。

「新卒で入社した男性社員。彼は子供のころ病気で片足を切断、義足生活を余儀なくされました。入院中の楽しみはテレビだったそうで、『24時間テレビ』も観ていたとのことです。面接の際、彼は『入院して苦しかったとき、さまざまなテレビ番組が私を支えてくれました。では、番組を作る側から私のような人たちを支えることができないだろうか。そう考えたのです』と志望動機を話してくれたのです。現在彼は、『やりたかった』というスポーツ番組のアシスタントディレクターとして制作に携わっています」。

視覚、聴覚障がい者の業務フィールド拡大が
取り組むべき大きなテーマになっている

日本テレビの場合、新卒採用は総合職での採用が原則です。採用されれば、職種、業務内容とも障がいの有無とは無関係。このことは、前述のエピソードからも明らかです。

「当社では、『障がいのある方のための仕事』という考え方はしていません。その方がやりたいことと、障がいの内容と程度を勘案し、可能な限り『やりたいこと』にマッチした仕事に就いていただく。これが配属の基本です」。

障がいに対するサポートも充実しています。

「汐留本社は、30階以上の高層ビルです。東日本大震災の折、エレベータが停止し、高層階勤務の下肢障がいの方が避難に難渋されました。そのため、階段避難車を設置。軽量で操作も簡単なこの避難車は、女性一人でも男性を乗せて階段をラクに下りることができます。避難訓練では社員の一部に操作を覚えてもらい、『いざ』というときには対応できる体制を整えました」。

ビル内の各階には、車いす用のトイレも設置されています。このように、サポートを含め日本テレビの障がい者雇用への取り組みは意欲的なものです。ところが山川さんは「しかし」といいます。

「日本テレビの社員数は、1200名弱。その約8割が、番組制作とその放送に直結した業務を行っています。テレビ番組の大部分が、映像と音声で構成されていることはご承知のとおりです。そのため、視覚と聴覚に障がいのある方の業務フィールドがどうしても限定されてしまいます。もちろん、事務系の仕事はありますが、社員数からもわかるように、それほど多くの人員を必要としていません。視覚と聴覚障がいの方の業務フィールドをどのように拡大させていくか。このことは当社に限らず、テレビ産業に共通する問題点であり課題です」

この課題に対し、日本テレビは解決策を模索しています。

「視覚、聴覚の障がいといっても、その障がいの内容はさまざまです。まずは、文字放送業務や視聴者対応業務などから業務に加わってもらうという事例を作っていくこと。そして雇用のケースが増えることで、周囲の理解・協力も深まり、徐々に障がい内容の幅を広げていくことが可能になる。恐らく長い時間がかかるでしょうが、それをやらなければと思っています」。

「常々“真面目”が日本テレビの社風だと感じています」と山川さん。この真面目さが「できないことをできる」にしてきたチャレンジ精神の源泉といってよいでしょう。であれば、山川さんのいう「やらなければ」が現実のものとなる日がきっと来るはずです。

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