障がい者雇用の取り組み vol.09
2013/03/14

“協働”を経験した
人材を
社会に送り出す役割

プロフィール

TOHOシネマズ株式会社

人事労政部人材開発室 マネージャー
塩崎 雅大
人材開発室
塚原 真樹

全国約60の映画館で
障がいのある人を積極的に雇用

1961(昭和36)年1月、東宝の映画館で『名もなく貧しく美しく』という作品が封切られました。聴覚障がいの夫婦の苦難の人生と彼らの息子との絆を描いた名作です。
今回、人材開発室の塩崎雅大さんと塚原真樹さんに話を伺ったのですが、そこで感じたのは映画と共通する人との絆、スタッフを温かく見守る姿勢でした。
共通点を思い起こすきっかけとなったのは、「GOOD MEMORIES」と「ノーマライゼーション」という言葉です。

「TOHOシネマズは、全国各地に約60の映画館(シネマコンプレックス)を展開しています。当社の事業は、地域のお客様に愛されてこそ発展していくものです。では、映画を上映する以外で、地域の発展のために何ができるか。それは、地域に密着した雇用をしていくこと。そうした取り組みのひとつが障がいのある方の映画館での雇用です」

塚原さんは、事業の地域性と障がい者雇用とのつながりをこう話してくれました。現在、TOHOシネマズのほぼ全館で、一名ないし二名の障がい者の方が働いています。こうした塚原さんの話を受けて塩崎さんから出たのが「GOOD MEMORIES」でした。

「GOOD MEMORIESは当社の基本となる理念です。この理念は、障がいのある方の雇用にも通じるところがあると考えています」
同社のHPには「GOOD MEMORIES」について、「劇場で過ごされる時間を、素晴らしい思い出としてお持ち帰りいただけるよう、心をこめておもてなしすることが、私たちの使命です」という一文が記されています。この姿勢は従業員に対しても同様です。

「最近、『正社員として採用が決まったので退職いたします』といわれる方が増えてきています。映画館での雇用形態はアルバイトです。正社員への登用制度もあるのですが、正社員ですと全国に映画館がございますので、転勤を伴う異動がございます。一方、障がいとの関係で、たとえば地元の病院に通院しなければならないなど、地域から離れるのが困難な方が大勢いらっしゃいます。当社の映画館の場合、接客を中心に数多くの業務がございますので、そうした業務で経験を積み自信を得た方が、地元で就職活動を行い正社員として採用されています。接客業務を通じてコミュニケーション能力を養ったり、シフトの交替勤務でチームワークを学んだり、様々な経験がお役に立ったようで大変に嬉しいことですね」(塚原さん)

「GOOD MEMORIES」に関するHPの一文にある「おもてなし」を「雇用」に置き換えれば、まさに理念は「障がいのある方への雇用にも通じる」ことになります。

障がい者と共に働いた経験者を
社会に送り出し続けていきたい

「私たちは『この業務にマッチした方を採用する』というやり方は一切していません。アルバイト採用という形でもあり、常に定型的な業務をお願いできるとは限らないからです。そのため、実際に業務を見学していただき、その中から『これならできる』『これをやってみたい』という希望に沿って、まずは決めていきます。理由は『門戸を大きく開く』ことが重要だと考え、より多くの方の採用を実現させようとしているからです」(塚原さん)

採用、業務選択、労務管理の責任者は映画館の副支配人。人材開発室では、必要に応じて副支配人の集合研修を実施しています。
「そうした研修の際、事前に取ったアンケートに、聴覚に障がいのあるスタッフが『自分は手話ができるので、それをお客様にアピールしたい』との要望がありました。当該映画館の副支配人は『その要望を活かす方法はないだろうか』ということを我々に伝えてくれました。このように挙がってきた意見にはきちんと応えなければなりません」(塚原さん)
本部での検討を経て「スタッフ・パス(障がい認知用名札)」が導入されました。名札には、顔写真、障がいに関するコメント、名前(ひらがな表記)が掲載されています。「お客様に障がいを理解していただけることで、不安なくコミュニケーションをはかることができるようになりました」というスタッフのエピソードを塚原さんから伺いました。

TOHOシネマズの方針である「採用の門戸を大きく開く」ことのひとつに、「障がいのある人と職場を共にする」ことが挙げられます。この点について、塚原さんは「最初から何らかの効果を期待していたわけではないのですが」と断りつつ話を始めました。

「障がいのある方の育成には、その人に合わせた配慮が求められることがあると思います。そしてこの経験が、育成する側のレベルも向上させていったのです。具体的には、新人スタッフをより効率的に育成できるようになった、従来はその場その場で判断していた運営のオペレーションを誰にでもわかるよう標準化したり、困っているスタッフがいたらすぐにフォローする気持ちが生まれチームワークが密になったなど、事例は枚挙に暇がないほどです。また、『こうした取り組みを行っているTOHOシネマズで働けてよかった』といってくれる学生アルバイトのスタッフがいたとのことです」

「障がいのある方と一緒に働く経験を通じて、支配人、副支配人、そしてスタッフたちが成長し“協働”を当然のことと考えるようになる。塚原がお話しした学生アルバイトのスタッフのような“協働”の経験者を社会に送り出す。こうした役割を積み重ねていくことが、当社が標榜する『ノーマライゼーション社会の実現』につながるのだと思っています」と塩崎さん。

障がい者と共に生きる社会。そのシーンは、TOHOシネマズで働く人たちの心のスクリーンに映り続けていくことでしょう。

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