障がい者雇用の取り組み vol.054
2016/05/26

共生の理念を掲げ
障がいの有無に
かかわらず
ともに成長できる
職場づくりを

プロフィール

キヤノン株式会社

人事本部 人事統括センター 主席
山林 美紀

選考段階から対話を重視して
ミスマッチや障がい者の不安を取り除く

キヤノンキヤノン株式会社(以下、キヤノン)には380名以上の障がいのある社員が働いています。その内容も身体、知的、精神障がいなど多岐にわたっています。こうした多くの方が働く同社の根底にあるのは、「ノーマライゼーションの理念」です。お互いがお互いの個性を尊重し合ってともに働き、ともに成長してゆく環境づくりに尽力しているのです。ノーマライゼーションを実現するために、各事業所の手すり、エレベーター、トイレなどの設備面のバリアフリーを整備することに加え、対話を通じた「心のバリアフリー」にも力を注いでいます。

「当社では『共生』の理念を掲げています。この理念には、『文化、習慣、言語、民族の違いを問わず、人類が末永く共に生きる社会をめざす』という意味があります。もちろん、障がいについても同じ考えです。ともに働く社員として能力を十分に発揮していただくために、採用選考段階から応募者の配属を検討している部署の管理職者が同席します。そこで業務内容や必要なスキル、応募者自身がやりたいこと、職場の雰囲気、就労時間など具体的な意見交換をして、できるだけミスマッチが起きないように留意しています」

そう語るのは人事本部 人事統括センターの山林美紀主席。このように採用段階から対話を重ねて、その方の「やりたいこと」、「できること」と「できないこと」を把握。そうすることでミスマッチを防ぐと共に、応募者の方の不安も取り除くようにしています。

「状況に応じて、障がいのある方に選考段階で業務体験をしていただくこともあります。実際に業務の一部を遂行しながらスキルや適性を見極めることで、担っていただく業務やフォロー体制を予め整えておくことも可能となり、スムーズに職場に馴染んでいただくことができると思います」(山林氏)

人事本部と各事業所が連携しながら
誰もが働きやすい環境を整備していく

同社では入社後についても、細やかなフォローを実践しています。キヤノンの障がい者採用は人事本部で一括して行っていますが、入社後は、配属先となる各事業所の人事部門へと引き継がれます。さらに配属先職場の上長も加わり三者のリレーションによって、入社後のフォローにあたっています。

「具体的には、入社1カ月後に出勤状況や職場でのコミュニケーションがうまくいっているかなどを確認し、その後は事業所の人事部門や健康支援部門に引き継いで個別フォローを行っています。すべての社員は年4回上司とオフィシャルな面接を行う制度があります。また、上司はもちろん人事部門や健康支援部門に、必要なときには随時相談することができる窓口が設けられており、障がいのある社員とその上司の双方を適宜サポートするようにしています」(山林氏)

このように就労後は、各職場と連携しながらサポートに努めています。同時に障がいに対する職場の上司や同僚の理解も不可欠なため、効果的なコミュニケーションの取り方の研修プログラムを受けていただいたり、ハローワークの担当者を招いて障がいに関する勉強会を開催したりすることもあります。障がいのある方を職場に迎え、今まで曖昧だった業務をマニュアル化するなどの効果が出ている職場もあります。
また、キヤノンでは行動指針に「自発・自治・自覚」という「三自の精神」を掲げています。これは、自分が置かれている立場・役割・状況をよく認識し(自覚)、何事も自ら進んで行い(自発)、自分自身を管理する(自治)というもので、この行動指針は当然ながら障がいのある社員もめざすべき指針です。つまり、同社では障がいの有無に関係なく、主体的に働く社員を求めています。

「障がいはあくまでも『個性』の一つというのが当社の考え方。ですから評価基準も一般社員と同じ基準で評価を行い、昇級・昇格を決定しています。こうした実力主義が組織の活性化に結びつき、様々なスキルをもつ社員が活躍できる風土を醸成しています。また、成果だけでなくプロセス・行動を重視した評価を行うのも当社の特徴です。このような風土のもとで、障がいのある社員の定着率は高く、定年退職まで勤める方が多くいらっしゃいます」(山林氏)

公正な評価基準と実力主義を貫くキヤノン。ノーマライゼーションの尊重という考え方に則った様々な制度や支援体制を導入して、障がいのある社員一人ひとりのスキルを最大限に活かせる環境が整えられています。

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