障がい者雇用の取り組み vol.59
2016/11/30

“適材適所”を超えた
“適所適材”により
ミスマッチを防ぐ

プロフィール

株式会社東芝

人事・総務部 人財採用センター
センター長
三橋 一仁
主務
森本 浩司

東芝の総合力を活かし、グループが一体となり
障がい者雇用の一層の拡大に向けて活動を展開

みはしさん「東芝グループ経営理念」の筆頭に置かれているのが「人を大切にします」という言葉です。言葉の意味として、「東芝グループは、健全な事業活動をつうじて顧客、株主、従業員をはじめ、すべての人々を大切にします」という一文が付されています。今回紹介するのは「すべての人々」の中の障がい者。具体的には「障がい者雇用に関する東芝グループの取り組み」についてです。

2016年4月時点で、国内東芝グループの障がい者雇用率は2.27%で、民間企業の法定雇用率が2%に引き上げられた2013年以降、常にそれを上回っています。障がい者雇用が加速したきっかけは、2004年度に強いトップコミットメントのもと、ダイバーシティ(多様性)マネジメントの推進が打ち出されたことにあります。前記の雇用率は、推進活動の成果にほかなりません。そして今、東芝における障がい者雇用の活動は、新たな展開に入りました。

「東芝グループを挙げての障がい者雇用の拡大。これに取り組んでいる最中です」
こう言われるのは、人事・総務部 人財採用センターの三橋一仁センター長。ポイントは「東芝グルーブを挙げて」にあります。そのためのコンセプト設定と、グループ全体をリードする起点を、人財採用センターが担っています。

「我々がまずやらなければならないと考えたのは、職場の理解の浸透。つまり『受け入れる職場とのマッチング』でした。ここをしっかり固めておかないと、受け入れ後にいずれ破たんをきたす恐れがあると考えました」(三橋さん)

マッチングに関する施策のスタートは、2016年7月。社内各部門に加え国内グループ会社の人事・総務部門担当を対象とした勉強会、「障がい者雇用に関する職場理解促進講座」を2日間にわたり開催しました。

「これまで東芝グループでは、身体に障がいのある方を中心に採用・雇用活動を行ってきました。しかしこれからは、さらに幅広い障がいのある方を積極的に受け入れていくことが求められます。これに対応するため、講座の中では様々な障がいの内容、タイプごとの特徴、受け入れにあたってどのようなことが必要かつ求められるかなどを説明。どれも基本的なことですが、我々が起点となり、そういったことを地道にグループ各社に落とし込んでいくわけです」(三橋さん)

講座に次いで実施されたのが“仕事(ジョブ)の切り出し”です。これについては、三橋さんと同じ人財採用センターで、採用・雇用の最前線で活動されている森本浩司主務にうかがいました。

「講座を通じて、受け入れに関するマインドの醸成が進みました。その一方で、次に必要となるのが、東芝グループは雇用拡大のためにどのような仕事を提供できるかという、日々の就労に根ざした施策です。今回、東芝およびグループ各社に依頼し、業務の切り出しを行ってもらったところ、ポジションの大小はありますが、全国で450ぐらいのジョブが出てきました。これをもとに10月15日、『障がい者のための東芝グループ就職フェア』を開催。社内カンパニーと東芝グループで計21のブースを設け、約100名の参加者との面談を行いました。当日の面談後、個別に次の面接ステップに進んでいただいたケースも少なくありません」

講座の実施、仕事の切り出し、就職フェアの開催。この一連の施策は、「基本的にグループ全体で一体感をもって活動することで東芝の総合力を活かす、というコンセプトで展開しています」と三橋さんは強調されました。

究極のダイバーシティとは
ダイバーシティという言葉がなくなること

もりもとさん講座、業務の切り出し、就職フェアが「ミスマッチを防ぐ」という考えから案出されたことはいうまでもありません。特に“仕事の切り出し”は、それが顕著な施策と言えるでしょう。

「従来、私たちが合同企業面談会などのイベントの場で第一義としたのは“人”でした。面談を通じて採用意欲が刺激された場合、あの事業所に、この部門にと紹介先の検討をします。しかし、想定する仕事内容とその人の資質とのマッチングが必ずしも図れていたわけではありません。もちろん、人を起点とする判断は大切なものですし、これからもその思いは変わりません。その一方で、仕事を起点とする判断も併せもつ必要があると考えています。切り出された仕事をストックにもって面談することで、たとえば『この仕事に最もマッチするのは、この人だろうか、それともさきほどの人だろうか』とか、『切り出した仕事の中で、どの仕事にもっともマッチする人なのか』などという複数のアプローチができるわけです」(三橋さん)

起点の比重を“人”ではなく“仕事”に置く。それはどういうことか、三橋さんは興味深い表現を使って説明してくれました。

「よく“適材適所”と言いますが、もちろんこれは人を起点とした考え方です。では、逆にしてみたらどうなるのか。“適所適材”とは仕事を起点とした考え方で、そのジョブに求められる資質を備えた人は誰なのか、それを探すことがテーマです。人に比べれば仕事の曖昧さなどわずかなものですから、仕事を起点にするほうがミスマッチは確実に減るでしょう。さらに、応募された方に対しても『これだけの仕事があります』と選択肢の幅の広さを伝えることが可能です。ご本人と採用側の双方向から判断するわけですから、ミスマッチ回避の確率は上がるはずだと思います。ミスマッチをいかに撲滅するか。我々はそれに注力しようと取り組んでいます。ミスマッチが少なければ少ないほど、間違いなく定着は進みます」

マッチング重視の施策は、これだけで終わりではありません。森本さんは次のように話します。
「書類選考を通過された方は、部門面接というステップに入ります。部門面接は、基本的に、切り出した仕事にマッチすると双方で判断した職場で行われます。事業所、本社、支社など、当該の職場に来ていただき、面接だけでなく、業務紹介も行われます。また、必要に応じて同じような障がいのある先輩社員との懇談の場を設けることもあります。懇談を通じ、ご自身のキャリアパスのイメージを描いてもらったり、先輩がどのような形で活躍しており、どういったところに仕事のやりがいを感じているかなどを知ってもらう。このようにして、職場や仕事の雰囲気、そして人の面からも“適所適材”のレベルをもう一段階、さらにもう一段階と深化させた上で最終的に当社を志望していただく。このマッチングのプロセスが重要であると考えています」

「東芝グループは、多様な人材の積極的な育成・活用を原動力とし、新たな価値の創造や新規市場の開拓を通じた『創造的成長』の実現をめざしながら、持続可能な社会の発展に貢献していきます」
これが東芝グループの掲げる「多様性の推進の方針」です。障がいのある人の採用と定着。そのためのマッチングの徹底は、掲げる“方針”の一翼を担うものなのです。

締めくくりとして、三橋さんの言葉を紹介します。
「私は、究極の『ダイバーシティ』とは、『ダイバーシティという言葉がなくなること』と思っています。その人にふさわしいキャリア形成と能力発揮は、障がい者、女性、外国人、高齢者という属性と無関係であり、それは属性を問わず、一人ひとりに対して上長が考慮し、相互のコミュニケーションを通じて生み出していくもの、ひいてはそれが自然な形での多様性の尊重と推進に結実していく。時間はかかると思いますが、こうした文化が定着した時点で『ダイバーシティ? そういえばそんな言葉があったね』となることでしょう」

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