障がい者雇用の取り組み vol.61
2017/01/30

普遍性に富んだ
障がい者雇用施策と
その記録の資料化で
定着の向上をはかる

プロフィール

積水ハウス株式会社

人事部 東京オフィス 課長
若海 保之

就労経験のある社会人採用を通じて受け入れのノウハウを
蓄積するとともに社内の理解を促進し
新卒者の採用を本格的にスタート

わかうみさん障がい者の採用拡大と雇用(定着の促進)は、どのような施策によりどのようなプロセスで進められていくのか。企業によって一様ではないものの、ここで紹介する積水ハウスのケースは、施策とプロセスに関する一つの典型を示していると考えて良いでしょう。

従来、積水ハウスの障がい者採用は、どちらかといえば新卒者より、すでに就労経験のある社会人――いわゆる中途採用――に比重が置かれていました。2016年時点で障がい者の採用活動と雇用施策を15年にわたり担当してきた人事部東京オフィスの若海保之課長は、その理由を次のように話します。

「当時、支店をはじめとする事業所の中には、障がい者の受け入れについて未経験というところが少なくありませんでした。そうした受け入れノウハウのない事業所にいきなり新卒者を配属するのは、お互いにとってあまりにもリスクが大きすぎます。その点、就労経験者の場合、たとえば、自分が能力を発揮するためにはどのような職場環境が必要なのかを心得ていますので、自分からそれを伝えてくれます。このような就労経験者の雇用を積み重ねることで、人事部に受け入れのノウハウが蓄積し、厚みが増してきたのと併せ、社内にも障がい者と共に働く土壌、つまり理解が生まれ、さらにそれが浸透していきました」

積水ハウスが新卒者の採用を本格的にスタートさせたのは、2010年入社の社員から。以来、毎年約10名の新卒者を迎え入れています。
「全事業所で障がいのある方を1名以上は受け入れ、定着を促進させる。これは積水ハウスの基本方針であり、毎年必ず全国の事業所にこのことを発信し続けています。また、すでに実績のある事業所については、さらに1名という形で受け入れを促しています。また規模の大きな支店の場合は、もう1名、そしてもう1名と目標を設け、拡大をはかっている状況です」(若海さん)

なお、積水ハウスの障がい者雇用率は、2017年1月時点で2.18%。「新卒者の定着率が極めて高いため、雇用率は安定しています」と若海さんは話します。

定着の安定化に資する施策としては、まず試用期間から本採用へ移行する時期、受け入れ各事業所に人事担当者が出向いて直接本人に仕事内容や職場環境などの確認を行うフォロー面談が挙げられます。

「フォロー面談の際は、職場で教育係として選ばれ指導を行う先輩社員にもヒアリングを行います。ヒアリングでは、『こんな配慮をしてほしいと言われたのですが、実際にはこの配慮が必要でした』とか、『配慮について、入社前の懸念はありませんでした』というように、さまざまな現場の生の声が私たちに伝えられます。このヒアリングにより、人事部に受け入れのノウハウがさらに積みあがっていくわけです」(若海さん)

キャリアアップ・チャレンジ制度で総合職への
転換を可能にし、ダイバーシティ交流会で
横のつながりを密にすることで定着を進める

定着をいっそう促進させるための施策としては、「キャリアアップ・チャレンジ制度」と「ダイバーシティ交流会」が挙げられます。前者は、地域勤務職から総合職への転換により、意欲と能力のある人材にそれを発揮するフィールドを提供する制度。2014年のスタートから2016年までの間に、すでに3人の障がいのある地域勤務職が総合職への転換を果たしています。

「ダイバーシティ交流会は、障がいのある社員が地域ごとに集まることで横のつながりを築き相談し合えるネットワークを設けるため、2015年12月にスタートしました」(若海さん)

交流会は大阪本社からはじまり、関西エリア、関東エリアで2回、中四国エリア、九州エリア、中部エリア、そして2016年12月の東北エリアで全エリアが終了。1年をかけてのイベントでした。

「参加者にはアンケートに答えてもらいました。『交流会に参加して良かった』という回答が多かったですね。具体的な内容については、キャリアアップ・チャレンジ制度で総合職に転換した者、地域で誰もが認める活躍を示している者にそれぞれスピーチをしてもらいました。『とても刺激になった』という反応から、参加者にはステップアップ、キャリアアップをめざしている人も少なくないことがわかりました。そして、まだそこまでではなくとも、障がいを理由に可能性を狭めることはないのだと改めて感じた人もいます。他には、あるベテラン社員が『自分の障がいについて、最初は周囲にサポートを頼むのにためらいがあったが、やはり自分から発信しなければ働きやすい職場環境は作れないと考え、それを実行した』と後輩たちに伝えていました。お話ししたように、人事部には受け入れに関するノウハウの蓄積があり、また障がい内容別のサポートマニュアルもあります。しかしそれだけで個別対応が完璧にできるわけではありません。交流会は、後輩が先輩から実体験を聞く場ですから、自分にマッチしたもののチョイスが可能。従って、先輩と後輩の交流は、さまざまな面で情報の交換が行える大切な機会なのだと思います」(若海さん)

フォロー面談、教育係に対するヒアリング、そしてダイバーシティ交流会。そのすべてにわたり内容は記録され資料として残されており、今後もそれは続きます。そうした資料が次の担当者に引き継がれることで、新たな定着のための施策がさらに生まれていく。積水ハウスが企業理念の根本とする哲学は「人間愛」。すべての人が平等であるからこそ人間愛が生まれ、それが実践される。この普遍性に富む哲学が、積水ハウスの障がい者雇用(定着の促進)に関するさまざまな施策に反映されていることは間違いありません。

この記事の関連リンク

この記事をシェアすることができます。

トップに戻る

障がい者雇用の取り組み BackNumber