特集 障がい者が活躍する職場レポート vol.16
2020/08/21

障がい者自らが
中心となり
多彩な事業を展開

プロフィール

ANAウィングフェローズ・ヴイ王子株式会社

働き方企画部 マネージャー
俣野 公利

多彩な事業領域で多くの障がい者が活躍する
ANAグループの特例子会社

またのさんANAウィングフェローズは、1993年6月にANAグループの特例子会社として設立し、同年10月に客室乗務員などの制服を扱う貸与品センター(現ユニフォームセンター)をスタートさせました。その後、ANAマイレージクラブセンター業務の受託、現在の大阪事業室である大阪ドキュメントセンターを開設するなど、事業を拡大してきました。2013年にはベーカリー事業などを展開する有限会社ヴイ王子と合併し、ANAウィングフェローズ・ヴイ王子株式会社が誕生しました。そして、コンビニオペレーションセンターなど幅広い事業に挑戦し、障がいの有無に関わらず社員が活躍できるフィールドを拡げてきました。

現在、同社の社員数は319名(2020年6月現在)で、そのうち270名が障がい者という構成です。管理職の約半数を障がい者が占め、自らが会社の運営・運用に大きく関わっているのが同社の大きな特徴といえるでしょう。

ANAウィングフェローズ・ヴイ王子ANAウィングフェローズ・ヴイ王子「当社の事業は、基本的には親会社であるANAからの業務委託が中心ですが、業務はバラエティに富んでいます。AMCセンターではANAマイレージクラブなどのご案内をはじめ、フライトマイルの登録や運用管理などのさまざまな業務を行っています。ユニフォームセンターでは、運航乗務員や客室乗務員などが着用する、会社から貸与される制服をお預かりし、クリーニングの取次や保管管理を行っています。また大阪事業室での業務には、航空機における整備記録の電子データ化などがあります。これらの業務はすべてANAの事業運営に不可欠な仕事ばかりで、当社で働く障がいのある社員も自分たちがANAの航空事業を支えているという誇りとやりがいを胸に抱きながら仕事に臨んでいます」

そう自社の特徴を説明するのは、働き方企画部マネージャーの俣野公利氏。さらに同社では、その他にも機体整備で使用する備品の補充をするグッドジョブサポートセンター、ANA社員が利用する空港施設内のコンビニ運営を行うコンビニオペレーションセンターなど多彩な職場があります。さらに外販事業として、パンの製造販売をするベーカリー事業部や再生紙を利用して名刺やはがきなどを作る青島ファクトリーも展開。こうした多彩な職場があることで、社員にとって自分が就きたい仕事や適性にマッチした業務に巡り合う機会が増えることにつながっています。

さらに同社の特徴を活かした事業にも挑戦。Universal Standard Consulting事業部を立ち上げて、障がい当事者の視点や立場から空港施設内や航空機内、ホテルに対してユニバーサルデザインの提案を行うなど、付加価値の高い事業の創造をめざしています。

社員が最高のパフォーマンスを
発揮できる環境づくりを実践

ANAウィングフェローズ・ヴイ王子同社で働く社員の障がい内容は、肢体、聴覚、内部、視覚、精神、知的などさまざまです。そのため、どんな障がい内容であっても安全で快適に働けるようにきめ細やかな配慮を行っています。まずハード面では、勤務する建物内は、車いす用のトイレやスロープを完備し、ドアも開閉式の自動ドアに改修しています。さらに通路の幅は車いすが余裕をもってすれ違えるように広く設計するなど、至る所に工夫が凝らされています。

「聴覚障がい者のためにオフィスには、大きなモニターを配置しています。健康診断の開催や社内ベントの告知、緊急時の連絡など音声だけでなくモニター上で映像やテキスト情報として知らせることで聴覚障がいの方に情報が届くようにしています。さらにUDトークやブギーボードなど、テキストでコミュニケーションが図れる支援機器を使うことで、打ち合わせや会議での意思疎通も格段に向上しました」(俣野氏)

このように設備面において、さまざまなケースを想定した配慮が施されていますが、同じように制度面においてもきめ細やかな対応をしています。例えば、勤務制度では、安定的に長く働いてもらえるようにという考えから、透析日に1~2時間時短できる「透析時短」、30分単位で3時間まで時短ができる「通院時短」など、多様な時短制度を導入しています。同様に各人の状況に合わせて働けるフリーデザイン制度を用意し、週に8時間を4日、6時間を5日、7時間を5日といった働き方も可能です。

さらに社内には臨床心理士が2名常駐し、いつでもカウンセリングが受けられる体制を整えており、精神面のケアも万全を期しています。そして定期的に上司と面談する機会を設けて、仕事の悩みや配慮面における相談なども話し合うことで、誰もが最高のパフォーマンスを発揮できる環境づくりを実践しています。こうした環境整備とともに同社では社員が前向きに仕事に向き合う企業文化も根づいています。

ANAウィングフェローズ・ヴイ王子「例えば、障がいによって10の内できないことが2あったとします。そのできない2ではなく残りの8に全力を尽くす。そして、できる8の部分を磨いて10に近づけていく。そんな仕事に対する姿勢を社員に求めています。そのために安心して働ける環境を会社が用意するので、社員にはそれぞれの職場で挑戦することを忘れないで頑張ってもらっています」(俣野氏)

このようにANAウィングフェローズ・ヴイ王子では、働きやすい「安心」を会社が用意し、社員は常に「挑戦する」ことで多くの事業を切り拓き、各人が活躍できる分野を拡げてきました。今後も同社のさらなる挑戦が期待されます。

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