障がい者雇用の取り組み vol.101
2020/12/22

適材適所と
定着支援に
取り組み
活躍の場を
提供する

プロフィール

株式会社Mizkan Holdings

人事本部 人材開発部 専任課長
榊原 健

配属先のマッチングを常に図り
適材適所での活躍を期待する

さかきばらさん1804年(文化元年)、初代中野又左衛門が酒粕からお酢の醸造に成功したことをきっかけに創業したミツカングループ。以来210年以上にわたり、常に「食」の提案を通して、新しい価値を創造してきました。アジアだけでなく北米、欧州とグローバルに事業展開の幅を広げ、現在は株式会社Mizkan Holdingsと社名表記も変更し、さらなるグローバル化をめざしています。
そんな同社では、障がいの有無で採用基準や入社後の待遇に差はありません。今回、同社の障がい者雇用における取り組みについて、人事本部 人材開発部 専任課長の榊原 健 氏にお話をうかがいました。

「基本的には、求める人材像も採用基準も、障がいの有無で差はありません。入社後、会社として障がいに対して配慮できることは行いますが、それ以外の業務への期待について区別はありません。総合職として入社される方は特にそうです。しかし、障がいのある方は、医療体制や家庭環境などの関係から自宅を離れたり、転勤が難しかったりするケースがあります。そこで、当社では総合職のほかにエリアを限定した雇用形態を用意し、障がいのある方が安心して勤務できる体制を整えています」

このエリア限定職に関して現在、同社で最も多くの採用がされているのは、東京と愛知県半田市周辺の本社地区の2エリアです。その二つのエリアを中心に採用すると、次のようなメリットがあるそうです。

「東京および本社地区には、さまざまな部門があります。職種も多岐にわたるため、もし最初の配属先でミスマッチとなっても、異動して適材適所での配属をすることができます。ミスマッチを起こしたまま働くのは、ご本人にとっても会社にとってもメリットを生みません。そこで当社では、社員の適性に合わせた異動や意欲に合わせたステップアップなど、積極的に行っています」

同社では主に新卒採用で障がいのある方を雇用しています。初めて社会に出る方の中には不安を抱えるケースも少なくありません。そこで、慣れるまでは地元で勤務できるエリア限定職として入社し、その後自分のキャリアアップのためにエリアを限定しない総合職にチャレンジできる制度も準備されています。

「基本的に仕事はエリア限定職の方にも高いレベルのアウトプットを期待しています。ご本人のやる気次第でどんどんレベルの高い業務を任せていきます。また総合職の方には幅広い職種で、かつ勤務地を固定しない中での活躍を期待しています。将来的にはマネジメント業務に携わる可能性もでてきます。エリア限定職の方で、自身の能力を磨きつつ、マネジメントにも挑戦したい、そんな方は総合職へチャレンジしていって欲しいと考えています」

入社後のフォロー体制を構築することで
職場定着と成長を支援する

先にも書きましたが、同社では入社後の待遇に障がいの有無で差がありません。それはもちろん、仕事内容にも差がないことを意味しています。もちろん、障がいによってできないこと、不得意なことはあります。

「例えば、聴覚障がいの方向けに音声ソフトの導入、上下肢障がいの方のために台の位置を調整するなど、必要なハード面は障がいの様子を確認し、できるだけ対応します。当社での配属の基本方針は適材適所。必要な配慮事項を対応し、不得意をカバーできるように仕事内容や配属部署自体を検討した上で、業務内容に特に差をつけることなく、誰もが同じ業務に就いていただくスタンスで配置しています」

その上で、同社では入社した方のフォローに取り組んでいます。その内の一つが、1年間のエルダー制の導入です。

「入社して最初の1年は、エルダーと呼ばれる先輩社員が公私にわたってのサポート役としてつきます。このエルダーには比較的年齢の近い社員が選ばれます。そして、仕事のこと、それ以外のことなど、何でも相談できる体制を築いています。そうすることで、障がいのある新入社員の職場定着につながるだけでなく、エルダー自身も、障がいのある社員をフォローすることで相手の気持ちになって考えることができるようになり、お互いの成長につながっていると考えます」

その他、上司との面談や産業医との面談など、相談できる機会を設けて定着支援を行っています。それらの取り組みが、障がいのある新卒入社社員のこの3年間の離職率が0%という、非常に低い数字につながっています。

「多くの企業の中から当社を選んでいただき、せっかく入社いただけるわけですから、長く働いてほしいと思っています。そのためには業務を通じて自己成長できると感じることが一番と思います。また本人のやりたい業務がその機会になりやすいことも事実です。そこで、1年に1回の自己申告制度も設け、他の部署の状況を確認しつつ、できる限りマッチングを図って配置転換を行ったり、ステップアップをめざせるようにしています」

同社では、さまざまなことに取り組み、年々雇用の拡大を行ってきました。しかし、まだ課題はあると言います。

「他の社員に期待することは、障がいのある社員に対しても同じです。女性や外国人と同様に、障がいのある方も社内で活躍するのが当たり前にならないといけません。そのためにも、今よりももっと配属先の選択肢を増やす必要があります。社内の配属部署は年々広がっていっていますが、それでもまだ全部署で受け入れを行っているわけではありません。今後は、どのように受け入れ先の部署の理解を広げていくかが課題だと思っています」

210年以上の歴史を誇るミツカングループ。そんな同社には、「買う身になって まごころこめて よい品を」「脚下照顧に基づく現状否認の実行」という、事業を行う上での二つの原点となる企業理念があります。
すなわち、一つ目は、相手の立場になって考えること、そして相手との関係性を大切にすることの重要性を表す言葉です。そして二つ目は、現状に満足することなく、常に自分を見つめ直し、挑戦を続けることを表しています。その長い歴史が積み重ねてきた同社において、その根底にあるのはこの二つの理念。今回お話をうかがい、その理念は同社の障がい者雇用に対する取り組みにも表れていると感じました。
同社の挑戦は、今後も続くことでしょう。

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