松竹株式会社
人事部人材開発室
室長
松尾 健司 氏
創業以来120年以上にわたって日本の映像、演劇等の発展を支え続けてきた松竹株式会社。その歴史は、日本のエンターテインメントの歴史そのものです。今回、松竹の障がい者雇用についてお話いただいたのは、人事部人材開発室 室長の松尾健司氏です。
「松竹と聞くと、映画や歌舞伎などのイメージが強くあると思いますが、私たちのビジネスはそれだけではありません。映画や演劇でも、企画・製作、宣伝、営業、劇場運営、2次利用まで行っています。また、不動産のビジネスも行っており、さらに最近では、新規事業にも力を入れています。そんな多様なビジネスを支えるのは、そこで働く多様な人材の活躍に他なりません。私たちは社員の多様な個性を尊重し、皆が活躍することで会社が発展していくと考えています。もちろん、その多様な社員の中には障がいのある方も含まれます」
松竹では、さまざまな仕事を経験することで可能性を広げ、自社でしっかりと成長してほしいという願いから、障がいのある方の採用においても総合職での新卒採用を中心に活動を行っていると言います。
「映像や演劇に関連する仕事はもちろんですが、人事や経理などの管理部門など、当然一通りの仕事があります。職種別に採用を行うと、その人が最も得意とすることを生かすことができなくなるかもしれません。そこで、新卒総合職としての採用活動に重きを置いています。選考や研修を通して、各職場の状況やその方の適性、希望など、さまざまなことを考慮して初期配属先を決定します。そのため、さまざまな部門に配属される可能性があります」
実際に、現在雇用されている障がいのある社員には、人事部門で社員の給与を管理している方もいれば、広報室で社内外に向けて松竹のことをPRしている方もいます。また、劇場での演劇公演を支えている方、プログラムやグッズなど劇場で販売する商品を作っている方など、さまざまな部門で活躍しています。
「もちろん、中途採用で入社し、活躍されている障がいのある社員もいます。でも私たちは、さまざまな仕事を経験することで、松竹人として成長していってほしいと思っています。そのために、より可能性を広げるためにも新卒採用を重点的に行っているのです」
多様な人材の活躍は、周囲にとっても良い刺激となり、全体的な成長につながっているそうです。
「劇場に来るお客様にも、もちろん障がいのある方はいます。そんな方が映画や演劇を安心して楽しんでいただくためには何が必要か。それを、障がいのある社員から学べることもあります。どのようなサポートをすれば、より働きやすい環境になるか。何を支援すれば、能力を発揮できるようになるか。周囲の社員が障がいのある社員を自然とサポートすることで、お互いにフォローしようとする気持ちが生まれます。その気持ちが、良い作品づくり、環境や人に優しい劇場づくりにつながっていきます」
そうした働きやすい環境を考えるにあたって、松竹ではいかにしてミスマッチを防ぐかを尽力しています。
「どんなに環境を整えても、職場と社員がミスマッチを起こしていては、お互いにとってもメリットがありません。適材適所での配属が、長期的な成長ややりがいにつながると考えています。そのため、選考時からミスマッチ防止に努めています」
選考時に必要な配慮、将来どのように成長していきたいかなど、しっかりとヒアリングを行うそうです。そこで、本人の適性と配属先を見極めています。
「当社の強みは、業務の幅が広いため、その方に合った職場を提供できることにあります。もちろん、入社前に完全に見極めるのが難しい場合もあります。しかし入社してからも、人事部と産業医が密に連携を取り合い、本人との面談を通して情報を共有することで、一丸となって環境整備や配属先の見直しなどを行っています」
人間を描くことが得意だと言われる松竹。同社の作品では、映画や演劇の中でも多様な主人公が登場します。そのクリエイティブな精神は社内にも根付き、人材の多様性を生かした会社づくりも得意なのだと思います。今後も多様な作品を発信し続けることで、社員の多様性も尊重していくことでしょう。