アマゾンジャパン合同会社
オペレーション技術統括本部
統括本部長
渡辺 宏聡 氏
ショッピングをする際の選択肢の一つとして、いまや人々の生活に欠かせない存在となった総合オンラインストア「Amazon.co.jp」。日本の現地法人として、同ストアの運営を行うのが、アマゾンジャパン合同会社です。数億点のありとあらゆる商品を扱う同社では、多様な人材の活用についても積極的な取り組みを行っています。
同社の障がい者雇用の現状についてお話しいただいたのは、オペレーション技術統括本部 統括本部長の渡辺宏聡氏です。
「お客様によって、そのニーズはさまざまです。しかし、私たちは『地球上で最もお客様を大切にする企業であること』をめざしています。そのためには、どんなニーズにも応えていきたい。そこで重要になるのが、働くスタッフの多様性です。多様なスタッフの観点、個性、価値観が新しいアイデアを生み出し、その多様な考え方が会社の成長につながっていくことを、私たちは実感しながらこれまで事業を展開してきました。障がいのある方も、そんな多様な価値観を生み出す原動力の一つだと考えています」
渡辺氏が統括するオペレーション技術統括本部は、アマゾン物流拠点の設計・改善、設備の維持・管理などを行う部門です。現在、同部門では、障がいのあるスタッフが事務系、技術系問わず活躍しています。
「どういう環境が働きやすいか、どんな働き方が自分に合っているかは、人それぞれ違います。それは障がいのある方だけではありません。私たちは入社していただくからには全員に戦力となってほしいと思っています。一人ひとりが成長し、活躍することでチーム全体が成果を上げる。それが会社の成長につながります。そのためには、それぞれの強みや個性を理解し、能力を発揮できる仕事は何かを考えてお任せすることが大切です」
渡辺氏が、スタッフ一人ひとりに能力を発揮してもらうために重視しているのが、その人に合わせたコミュニケーションだと言います。
「コミュニケーションの取り方も、人によって異なります。誰かに相談しながら業務を進めることで、能力を発揮できる方がいます。一方で、一人で黙々と進めた方が業務を遂行しやすい方もいます。その人に合わせてコミュニケーションを図ることで、全員に力を発揮してほしいと考えています」
オペレーション技術統括本部では現在、主に三つの部署で障がいのある方が活躍しています。
一つ目がフルフィルメントセンターです。そこでは多数のスタッフが働いているため、皆が快適に働くことができるように施設の管理、維持などを行っています。
二つ目が物流センターの設計を行うデザインチームです。コンピュータによる設計支援ツールのCAD(Computer aided design)を使ってセンターの設計、レイアウトを行っています。
そして三つ目が、メンテナンスチームです。
「メンテナンスチームは、物流設備の保全をするチームです。機械部品の管理や受発注を行う事務系の仕事と、荷物を運ぶコンベアや作業を自動化するロボットのメンテナンスなどを行う技術系の仕事の両方があるため、各人のスキルや適性に合わせて業務をお任せすることができる部署です。そのため、オペレーション技術統括本部では現在、障がいのある方について、特にメンテナンスチームでの採用を積極的に行っています」
同部門では現在、部門全体で障がい者雇用への理解が深まりつつあるそうです。そのため、そこで培った知識を共有し、新たに障がいのあるスタッフを受け入れるチームへの理解促進を図っています。
「現場のスタッフが自主的にハローワークや外部のアドバイザーと連携し、『精神・発達障がい者しごとサポーター養成講座』を開催して情報共有を図るなど、職場定着支援について積極的に活動しています。部門内全体で受け入れる体制を作ることで、スムーズな職場定着、業務進行につながり、長く勤務してもらうことでスタッフの成長へとつながっているのです」
そうした取り組みの甲斐もあり、同部門の中には業務を通じてやりがいを感じながらステップアップをめざす社員も多くいます。
「同僚がステップアップする姿を見ることで、他の障がいのある方にとってもモチベーションにつながり、お互いが切磋琢磨しながら成長する良い環境が築けています。まずは、毎日出社して、やりがいを持って働くことができる環境を用意すること。その当たり前のことを提供することで、スタッフはしっかりと成長してくれます。また、人によって理解する力は異なります。そのために、マネージャー職の中には誰に説明しても理解してもらえるように伝え方を工夫するなど、コミュニケーション能力の向上につながった方もいます。部門全員が一丸となって取り組むことで、全体的なレベルアップにつながっていくのだと、改めて感じています」
アマゾンジャパンの行動指針の一つに、「リーダーシッププリンシプル(Our Leadership Principles)」というものがあります。これは、役職などに関係なく、「スタッフ全員がリーダーである」という考え方です。
「一人ひとりがリーダーとしての意識を持ち、自分のことだけでなくチームのため、果ては会社全体のために行動することで、一人ではなく全員が成果を共有し、その喜び、やりがいを共有することができます。そして、自分だけでなく、皆で共に成長していこうという意識が生まれます。アマゾンジャパンには、そうした文化が根底から根付いています。受け身で仕事をするのではなく、責任を持って自分から仕事をする方ばかりだからこそ、定着につながっているのだと思います。今後もスタッフはどんどん増えていきます。その中にはもちろん障がいのある方も含まれます。人数が増えればクリアしなければいけない課題も増えますが、その分、さまざまな方と出会えることが今から楽しみです」
Amazonが創業した当時、「インターネット専門の小売店」の成功を信じる方は少なかったと言います。今日では世界中で事業を展開する同社の、そのアグレッシブなチャレンジ精神は、障がい者雇用においても活用されているようです。