障がい者雇用の取り組み vol.107
2021/07/19

人を大切にする
基本方針に則り
多様な人材が
働ける環境を
整備する

プロフィール

トヨタファイナンス株式会社

人事部 人事企画グループ マネージャー
関 智一

山川 亜莉紗

各人の個性を尊重することで
誰もが生き生きと働ける環境をつくる

トヨタファイナンス株式会社は、1988年にトヨタ自動車から分離・独立した、トヨタグループの中で国内唯一の金融会社です。トヨタグループ各社や販売店と連携し、グループ力を活かした事業展開を行っています。
そんな同社では人材マネジメントにおいて、「人を大切にする」という基本方針を根幹に掲げています。この基本方針は、「フェアネスを貫く」「多様性を認め合う」「人を育てる」という3つの考え方を柱に構成されています。

せきさん「トヨタファイナンスの人事制度、人事施策はすべてこの人材マネジメント方針に基づいて運営しています。それは障がいのある方を採用する際にも同じです。この『人を大切にする』方針は、決して社員を甘やかすというわけではありません。資質や強み、持ち味は一人ひとり違います。社員それぞれの個性を尊重することで、各人が能力を最大限に発揮しながら生き生きと働ける環境をつくることが、人を大切にすることだと思っています。そして会社と社員が相互に信頼し合える職場が一人ひとりの成長を促進し、さらには企業としての成長にもつながっていくのです」

同社の人材に対する基本方針についてお話しされるのは、人事部 人事企画グループマネージャーの関 智一氏です。この人材マネジメント方針に関して、同社ではHPに詳しく掲載し、また冊子にまとめて社内で配布するなど、社員への啓蒙を積極的に行っています。そうすることで、全社的に人材に対する考え方への理解が浸透し、社員が一丸となって成果を出すことにつながっているそうです。

「人を大切にするからこそ、私たちは仕事に対する遠慮はしません。障がいの有無に関係なく、社員全員が自分の強みを発揮し、しっかりと活躍してほしいと考えているからです。もちろん、能力を発揮するために配慮が必要であれば、できる限り対応します。でもそれは、障がいのある方に対してだけではありません。例えば、育児や介護と仕事を両立している方なら、急遽休まなければいけない日もあります。そんな時は、周囲のサポートが不可欠です。私たちはただ勤務することだけを支援するわけではなく、社員の『活躍』を支援しているからこそ、“働きやすさ”と“働きがい”をもてる風土づくりを実践しています」(関氏)

社員一人ひとりとヒアリングの機会を設け
職場定着・活躍支援につなげていく

遠慮せずに活躍してもらうために、同社では採用時のヒアリングを大切にしています。

やまかわさん「一人ひとり個性や価値観は違います。これまでにどんな経験をしてきて、どんな強みを持ち、将来どんなことを実現したいと思っているか。そのためにはどんな配慮が必要か。どんな形でなら、その方がやりたいことを達成できるか。そうしたことをしっかりとヒアリングし、同時にその方が持っている本当の強みを見極め、各人が能力を発揮できる部署への配属を検討します。そのために、私たちは障がい者雇用においても最初から仕事内容を限定したり、上限を決めたりせずに採用を行っています」

そうお話しされるのは、実際に選考を通して求職者からヒアリングを行っている人事部 人事企画グループの山川亜莉紗氏です。その言葉通り、会社全体で100ほどある部署のうち、現在約半数の部署で障がいのある社員が在籍し、「活躍」しています。

「労務管理業務、データ集計業務、オペレーションセンターでの顧客対応など、さまざまな業務に就いています。もちろん、障がい内容によってできないことはあるため、その人が強みを発揮できる環境で、どの方も、責任ある仕事に就いています」(山川氏)

そんな同社では、誰もが生き生きと働けるように入社後のヒアリングも大切にしています。上司との定期面談のほか、不定期面談も行うことで、やりたいことや困りごと、環境面で気になっていること、改善が必要なことなどを聞き出しています。

「新卒入社の場合は入社前に人事と面談を行い、その結果を受けて配属予定部署に説明を行います。その後、私のように『障害者職業生活相談員』の資格を有している者と入社1カ月後、半年後、1年後に面談をして、困りごとをヒアリングします。それ以降は1年ごとに職場上司とのキャリア面談を継続していきます」(山川氏)

また、上司とは別に、新卒採用者の場合はメンターがつくそうです。
「入社後1年間は毎月1回、メンターと面談して相談できる機会を設けています。実際に、面談でヒアリングした結果、音声アプリや拡大読書器、タブレットなどの導入につながったこともあります。最近は在宅勤務が進んだことで、自宅で使用するPCに拡大モニターを導入したケースもあります。面談で様々な話を聞くことで、次に同じ障がいのある方が入社する際にはどんなサポートが必要になるかを考えることができ、私たちにとっても理解を深める良い機会になっています」(山川氏)

障がいのある社員本人との面談だけでなく、人事部ではメンターからも話を聞きます。
「メンターの中にはプライベートも含めて障がい者と身近に接するのが初めての方もいます。サポートの方法に悩んでいる方もいるため、お互いの理解を深めるためにも相互から話を聞いているのです」(山川氏)

相互から話を聞いた結果は上司にも情報を共有します。たとえ特に困っていることがなかったとしても、これまでの接し方が間違っていなかったことを確認でき、「安心した」という先輩、上司もいるそうです。

「定期面談だけでなく、有給休暇取得の促進やフレックスタイム制度の導入、定期通院が必要な方への勤務時間の配慮など、さまざまな取り組みを行い、社員の職場定着ややりがいの醸成につなげています。その結果、障がいのある社員を初めて受け入れた部署では、意欲的に働いている姿を見て、部署内全体の活気につながったこともあります。また、聴覚障がいの方が配属された部署では、それまでは会議の内容などをドキュメントに残していなかったのですが、会議後に議事録としてまとめる習慣ができ、部署内全体での情報共有、コミュニケーションがスムーズになったこともあります。他にも、部門長の中には新たに入ってきた社員に対してどのようなサポートが必要かをヒアリングすることで、相手の立場になって物事を考える習慣ができ、マネジメント力の向上につながった方もいます」(関氏)

トヨタグループの安定性とさまざまなことに挑戦してきた文化を受け継ぐトヨタファイナンス。同社ではこれからも、安心して働きつつ、いろいろなことにチャレンジできる環境づくりを続けていくことでしょう。

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