特集 障がい者が活躍する職場レポート vol.09
2014/11/05

JR東海グループの
雇用拡大をテーマに
特例子会社ならではの
各種取組を実施

プロフィール

株式会社ジェイアール東海ウェル

代表取締役社長
萩野義明

「障がいのある方のより多くの雇用を可能にする」
という設立の目的に沿って、積極的に新事業を開拓

well_jrwellmain株式会社ジェイアール東海ウェル(以下、ウェル)は、東海旅客鉄道株式会社(以下、JR東海)の100%出資で2006年10月2日に設立され、2008年4月に営業開始するとともに特例子会社認定されました。

JR東海では、ウェル設立の検討時点から「障害者の雇用の促進等に関する法律」による雇用率を上回っていました。しかし、鉄道という事業内容や設備等の関係から、雇用可能な障がいの種別は限定されていました。そこで、障がいのある方々のより多くの雇用を可能にする為に「特例子会社」であるウェルを立ち上げました。

2014年10月現在、ウェルの社員数は38名で、うち障がい者は23名。その内訳は、知的障がい14名、精神障がい1名、肢体障がい4名、聴覚障がい4名。この中には重度障がいの方が6名いらっしゃいます。

営業開始以来、JR東海及びJR東海グループ等における印刷物のデザイン・印刷・封入封かん業務を事業内容として取り組んできました。また、2013年10月からは新たに、JR東海太閤ビル内の郵便物や宅配便の集配等を行う文書集配業務を開始しました。さらには、この文書集配業務を拡大していくために、2014年7月に総務省より特定信書便事業の許可を取得、2014年9月より、JR東海本社内での文書集配業務及び、JR東海本社とJR東海太閤ビルの間での文書運搬業務を開始しました。

萩野義明社長は、「関係社員が一丸となって取り組み、文書集配業務を印刷、封入封かんに続く当社第3の柱となる事業に育てていきたい。今後はさらに障がい者雇用に関する社会的要請が高まると想定されるが、引き続きできる限りの雇用機会の拡大に努めたい。」とお話しくださいました。

なお、全国に391社(2014年5月末現在)ある特例子会社の中で、ウェルは特定信書便事業の許可を受けた2番目の会社とのことです。

地域企業との情報交換などを通じ
障がい者の雇用拡大を自社に留めず周囲へ波及させていく

well_wordウェルでは、経営理念に「共働共生」を掲げており、それに続けて「『自立を志す障がいのある人』と『障がい(個性)を思いやる人』が共に働き、共に学び、豊かな事業運営を目指し、開かれた地域社会の発展に貢献します。」と記されています。

ウェルが、障がいの内容や程度も含め、障がい者の雇用機会の拡大実現に向け新事業の開拓など積極的な活動をしていることは紹介したとおりです。しかし重要なのは、雇用機会の拡大を自社だけに留めるのではなく、地域社会にまで広げようとしていることです。経営理念と経営方針には、その意志が明確に示されています。意志の具現化には、当然、実際の活動が伴います。

「障がい者を5人以上雇用する事業所は『障害者職業生活相談員』の選任が法律で義務づけられています。相談員になるためには、資格認定講習を修了しなければなりません。私はここ3年、講習の講師を務めています。聴講者は、特例子会社の方だけでなく、ほとんどは企業の方で毎回150名程が受講しています。講義の内容は、特例子会社の位置づけ、障がい者とどう向き合えばよいかなど、私たちが積み上げてきた特例子会社ならではの取り組みが中心となります。講習会のほかでも、特例子会社や障がい者を雇用している地域企業との勉強会を通じて皆さんと情報交換を行っています」

現在、民間企業では知的・精神障がいの方の雇用への取り組みが大きなテーマになっており、その経験のあるウェルの活動は重要な情報源になっています。

「障がいのある社員が働きやすい環境づくりも特に気を配っているテーマの1つです。毎朝の点呼では、全ての社員が日替わりで『安全』などをテーマに一言スピーチを行い、一人ひとりの社員が思っていることを言葉にして、行動できるようになることを目標にしています。また知的障がいのある社員は、業務開始時に一日の目標を設定し、終了時には振り返りを行います。日々、自分自身の成長を実感してもらえればと思っています。

より社員が充実して働くためには、ウェルの中だけで考えていてはいけません。会社と社員のご家庭の間でやり取りする『ホウレンソウノート』は、コミュニケーションツールとして非常に役立っています。初任給をもらった喜びを一生懸命家族に語っていた様子をご家族から聞けたときなどは会社としても非常にうれしいものです。

社員には、違った環境でも同じように頑張っている仲間がいることを知ってほしい。他の特例子会社や近隣の企業とのレクリエーションなどの交流を通じて、多くの人と触れ合うことで様々な気づきを得てほしいと思っています。このような中で、3年前から挑戦をはじめたアビリンピックでは、昨年、今年と連続して全国大会まで進む社員が出てきています。

このような取り組みは、私一人ですべてできるものではなく、障がい者と働くすべての関係者が心を一つにできるよう、努力し続けねばならないと思っています」

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