障がい者雇用の取り組み vol.034
2014/04/22

能力を最大限に
発揮し成長できる
環境をつくりあげる

プロフィール

東京海上日動火災保険株式会社

理事 人事企画部 部長
髙島 惠子

互いを認め合い成長できる風土の醸成と意識の浸透

東京海上日動火災保険株式会社東京海上日動は障がい者雇用について、ごく自然のこととして古くからその取組みを進めてきました。その中でも特にノーマライゼーション推進を意識し、社内に「ノーマライゼーション推進センター」を設置したのが1990年。その後、1992年に「職業生活相談員制度」の発足、社有施設のバリアフリー化など多岐に亘る取組みを進め今日に至っています。今回は東京海上日動火災保険株式会社の障がい者雇用について、人事企画部部長の髙島惠子さんに話をうかがいました。

「東京海上日動では、現在約300名の障がいのある社員が営業・損害サービス部門などそれぞれの職場で活躍しています。採用時と、入社後も早く職場になじみ活躍していかれるようにと、ハード・ソフト両面から様々なサポートを行っています。そして、これまで長く取組みを進め蓄積してきたノウハウを東京海上グループの他の会社にもアドバイスしたり、また相互に情報共有しながら東京海上グループ全体の障がい者雇用の取組みも後押ししています。

東京海上グループの各社においても、2007年頃まではそれぞれの会社方針にもとづき障がい者雇用を行ってきましたが、2008年にグループ全体として障がい者雇用に関する方針を明確に打ち出しました。方針の大きなテーマは『ノーマライゼーションの実現』です。『障がい者を広く受け入れ、多様な人材が活き活きと働いている企業グループへ』をビジョンとし、その中で「真のノーマライゼーションを目指す」旨が明確に述べられています。

この「ノーマライゼーション」という意味ですが、多くの社員には具体的にどういうことなのかよくわからないと思います。そこで、この「ノーマライゼーション」を少しでも正しく理解できるような表現に言い換えて伝えていく必要があるのではないかと考えました。「障がい者」は“支援してもらう立場”と思われがちで、そのように受けとめている方も少なくないと思いますが、実はそうではありません。障がいの有無に関わらずその人が持っている能力は多様であり、お互いに助け助けられる立場にあるということを社員が理解できるような表現にしたいと話し合いました。その結果、「『互いを認め合い、互いに支え合い、互いに高め合う』風土が根づき、障がいのある社員が能力を最大限に発揮できる環境を整える」という表現の目標を掲げることにしました。この実現に向けて、東京海上グループ全体で障がい者雇用の取組みを積極的に進めており、グループ全体では現在約700名の障がいのある社員が働いています」

こうした取組みとその実行および改善の中核を担っているのが、髙島さんが長を務める人事企画部です。

大切なのは、障がいのある社員と一緒に働き、お互いに切磋琢磨しながら成長できる環境を整えることだと思います(特徴的な取組みは“手引き”と“障害者職業生活相談員制度”)

『障がいのある社員が能力を最大限に発揮できる環境を整える』ための人事企画部の活動内容は具体的で示唆に富んでいます。まず紹介したいのが、障がいのある方を採用する際の留意事項、そして長く働き続けてもらうために上司や同僚が配慮すべき事項をまとめた“手引き”です。障がいのある社員と一緒に働いた経験がある社員ばかりではありません。そうした社員は最初はどのような配慮が必要なのかがよくわかりません。気を遣い過ぎてもいけないのではないかなど悩むこともあると思います。そこで、『「ノーマライゼーション」とは?』を始め、『障害者職業生活相談員制度』『社有建物・設備のバリアフリー(ハード・ソフト面)』『障がいに対する配慮(障がい部位別・対応器具等)』といったことを盛り込み、蓄積されたノウハウをまとめて活用してもらっています。内容は詳しいものですが、それについて「書き過ぎないのも大切」と髙島さんはいいます。「障がいの内容や程度によって配慮すべきことは必ずしも同じではありません。同じ障がいがあっても、Aさんはこういう点は配慮してほしいと感じていても、Bさんは配慮は無用ということもあります。まずはその人の障がいについて正しく理解すること、そして本人の意向を尊重しながら対応することが重要です。“手引き”を参考にしながら、あとは一人ひとりが相手の立場になって想像力を働かせて、できることを自分で考え実行することです。そしてわからない、判断に迷う場合は私たちに相談して下さいというようにしています。これまでの経験からアドバイスできることはたくさんありますので」と。

「さらに入社後もこうした配慮が継続できるように「障害者職業生活相談員制度」を設け、障がいがあるすべての社員一人ひとりに「職業生活相談員」を配置しています。「職業生活相談員」には年1回必ず障がいのある社員と面談する機会をつくることを義務づけています。面談の際には、「体調はどうか」や「施設面で改善してほしいと思っていることはないか(ドアが重い、荷物が置いてあり歩きにくいなど)」「業務量は適切か」など生活面を重視した面談を行い、障がいのある社員が一人で悩むことのないようにしています。また、面談時に確認漏れなどもないようにと所定の面談シートを使いそれに沿って実施してもらっています。面談の内容は上司、そして最終的には人事企画部にも共有され、問題があれば都度その改善に向けた対応を行うという仕組みです。また、こうした取組みから学んだ障がいについての理解と配慮については、社員が一般の方々に対してもきちんと行えるようにと、社内Web上にも参考情報を掲載しています」

『障がいのある社員の多くが当社で長く働き続け、それぞれの職場で活躍していることが何よりも嬉しい』とのことですが、それも同社の『考え方と手法』によるのはいうまでもありません。今後について、髙島さんは最後にこう言われました。

「大切なのは、障がい者雇用を自然なこととして続けていくことだと思います」

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