株式会社NTTデータだいち(以下、“だいち”)は、1年間の準備期間を経て2008年7月に設立されました。そして同年の9月1日に営業開始。従業員数16名中11名が障がい者で、内訳は、ヘルスキーパー(マッサージ業務)4名、在宅勤務(NTTデータグループのホームページ作成業務など)7名での船出でした。
「ヘルスキーパー、在宅勤務ともNTTデータが障がいのある方を雇用するに当たって設けた職種です。“だいち”設立時、その職種と人員をそのまま受け継いで最初の事業としました」
現在“だいち”では、ITサービス、ヘルスキーパー、農業、オフィスの4事業を展開しています。従業員数は2012年12月1日現在で、114名(うち障がい者80名)です。事業の中でも特殊なのが農業。データ通信のシステムインテグレータであるNTTデータの特例子会社“だいち”が、なぜ無関係とも思える農業事業なのでしょうか。
「NTTデータの勤務地は、大部分が首都圏です。設立の際、将来的に障がい内容の拡大と雇用数の増加を進めていく場合、首都圏に依存するだけでは限界があると考えました。限界を超えるには、地方の人材を活用したビジネスに進出する必要があるだろう。農業事業は、こうした経緯で生まれたものです。農業事業であれば、雇用可能な障がいの内容も広がります」
農業事業部の拠点は、沖縄県の石垣島と栃木県の那須町の2箇所です。
「石垣事業所では、パッションフルーツドリンクの製造販売を行っています。販売先は、NTTデータとグループ会社です。主に客先などへの中元、歳暮、手土産用に使ってもらっています。那須事業所では、森林牧場の放牧地管理と乳牛の飼育、さらにNTTデータグループ社員のリフレッシュの場として活用できる環境を提供しています。また、平成24(2012)年からは、敷地内に建設された高齢者施設内の清掃や居住者の身の回りの支援を行う事業も開始しました」
「地方の人材を活用したビジネスの開拓」は、“だいち”の事業展開を理解するためのキーワードといってよいでしょう。たとえば、オフィス事業部の札幌事業所で行われている“代表電話受付業務”。
「現在、NTTデータの代表電話はすべて札幌事業所が窓口になり処理しています。IPホンのネットワークを使っており、何の支障も生じていません。信頼性の高い情報セキュリティシステムがきちんと構築できれば、コールセンター業務も可能です。これは、今後地方の就労ニーズに応える上で期待できる分野ですね」
情報システムに関係する業務ニーズは、首都圏など大都市地域に集中しています。しかし、通信システムが高度化している現在、その活用次第で“代表電話受付業務”のように地方でも首都圏の業務を行うことは十分に可能です。当然それは、地方在住の障がい者の雇用拡大につながります。
「在宅勤務は、首都圏のシステム開発ニーズと地方の就労ニーズを結ぶためのモデルケースになると考えています。ITサービス事業部に在籍する障がいのある従業員は29名。うち25名は在宅勤務で、障がいの影響で通勤が不可能な方たちばかりです。居住地は北海道から沖縄までの19都道府県におよんでいます。25名は、5人のリーダーと20人のメンバーにわかれます。案件の内容により、リーダーが開発にふさわしいメンバーをチョイスしチームを組んで業務を進めていく。打ち合わせや進捗状況のチェックは、テレビ会議で行います。テレビ会議システムを使って朝会もやりますし、たまには終業後飲み会で盛り上がっているようです。こうしたことから、たとえ在宅であっても、コミュニケーションは円滑そのもので孤立化の心配はまったくありません」
現在、ITサービス事業部の受注案件は、NTTグループ内部からのものにほぼ限定されています。それは、外部の顧客から「在宅勤務者に業務を出す」ことへのコンセンサスがまだ得られないであろうと思われるからです。
「外部のお客さまに、いくらセキュリティは万全だからといっても納得はいただけないでしょう。ですから“だいち”としては、在宅勤務者の就労管理に関する法律などの整備、同じく情報セキュリティ、情報管理に関する法律などの整備を早急に進めてほしいと思っています。それも、厳しければ厳しいほど歓迎です。なぜなら『それだけ厳しい用件をクリアした会社なのだから』と、外部のお客さまに納得・安心して業務を発注していただけるからです」
「障がいの有る無しに関わらず、IT分野で在宅勤務を当たり前の雇用形態にすること」
これがNTTデータだいちの大きな目標なのです。