大和ハウス工業株式会社
人事部 採用グループ
グループ長
千原 誠 氏
大和ハウス工業株式会社は、グループ全体でダイバーシティ推進に積極的に取り組んでいます。多様な人材活用への取り組みの一環として「企業の発展とは、価値観の違いを超えた個性の活躍があってこそ」という考えのもと、障がい者雇用についても早い段階から力を入れてきました。
「私が大和ハウス工業に入社したのは1995年のことですが、当時からすでに雇用率は法定を越えていました。入社以来、その雇用率を下回ったことはありません」と語るのは、人事部採用グループ長・千原誠氏です。
「採用時は、入社したらどう活躍したいか、本人の意志や希望を尊重しています。また、入社後も職種の制限を設けず、本人の意向や職歴などを考慮して配属します。採用の基本となる考え方に障がいの有無は関係ありません。当社で働くことが本人にとっての幸せにつながるか、お互いに良い関係で仕事ができるかどうかを大切にしています。その考えに基づき、これまで当社では、『障がい者採用』という形態の採用はしていません。“本気で仕事をしたいと思っている人と一緒に仕事がしたい”という私たちの考え方のベースは、障がいがあってもなくても同じだからです。もちろん必要な配慮はしますが、採用後も基本的に誰もが一緒に仕事をしています」
本人の能力そのものや考え方に共感できるかどうか。その点を尊重して採用してきたことが、大和ハウス工業の障がい者雇用における一番の特長であり、これまでの雇用率の高さを維持してきた要因の一つでもあるのです。
現在、大和ハウス工業では、全国各地の事業所で多くの障がいのある社員が働いています。事務や設計などの内勤だけでなく、営業や施工管理などの外勤に就く社員も多数います。配属にあたっては、さまざまな面でサポートをしながら、本人の能力と個性を十分に発揮できるように環境を整えています。だからこそ、特別扱いをすることなく、高い業務レベルを求めていると千原氏は語ります。
「たとえば、障がいが理由で業務に必要な情報が得られない時は、別の手段を考える努力をしてほしいと考えます。一人の企業人として、努力をすることを怠ってはいけないというのが私たちの基本的な考え方。評価についても障がいがあるからといって優遇をせず、また処遇や昇格についても全社員同じレベルで対応しています。すべての社員が平等にチャレンジの機会を持つ職場で、ともに成長を促し、対等につき合うことが差別をなくすことにつながると考えるからです」
障がいをマイナスととらえるのではなく個性としてとらえ、持っている能力を存分に生かしてほしいというのが、大和ハウス工業の基本的な考え方だと語る千原氏。一人の社会人として、レベルの高い業務を期待しているのです。だからこそ定着促進にも力を入れているといいます。
「特別なことをしているわけではありませんが、ダイバーシティ推進の意味でも、障がいのある社員の定着促進には配慮が必要です。採用から各段階で対策を取るようにしていますが、選考の際には面接を特に丁寧にするよう心がけています。面接は2回行い、二次面接では採用想定部門の部門長同席で面接を行います。あらかじめ障がいの内容や本人の能力をきちんと理解した上で業務内容を考慮し、そこで長く働いていただきたいからです。さらに社内には全社員に向けた相談窓口があり、退職の話が出る前の段階できちんと対応できるようにしています。万一退職・転職の話が出た場合は、それが本人のためになるのか、キャリアアップの転職になるのかを親身になって一緒に考えます。問題を起こさないように、また起きた時は適切な対応ができるよう、体制を整えているので、定着率は安定しています」
さらに大和ハウス工業では独自の取り組みとして、半期に一度、全社員に向けた人権教育を行っています。さまざまな価値観や特性を持つ人がいることを理解し、その中で良好な関係を築きながら気持ち良く働く環境をつくるためです。
「大和ハウス工業では、グループ全体で女性の活躍推進やシニア層の活躍、グローバル人財の採用など、ダイバーシティ推進に取り組んできました。その結果、さまざまな特性を持つ人が一緒に仕事をするのが当社の特長でもあります。そんな中、職場での円滑なコミュニケーションは特に大切です。人権についての正しい認識を持ち、個々の職場を働きやすい環境にすること。それは結果として、社員一人ひとりの幸せにつながると思います」
世の中に必要とされる商品やサービスを提供するためには、仕事への情熱と努力、そして人への理解が大切です。障がいの有無にかかわらず、企業人として対等に向き合い、本気で仕事を共にしたいという大和ハウス工業株式会社の姿勢は、社会で働くすべての人にとって大切なことを教えてくれます。