障がい者雇用の取り組み vol.052
2016/03/01

同じ職場で働く仲間
という意識と環境が
障がい者雇用の
土壌となる

プロフィール

農林中央金庫

人事部 人材採用班 部長代理
榊原 浩美
人事部 人材採用班兼人事班 調査役
日比野 真吾

障がい者雇用に対する長い歴史を有する農林中金
必要な配慮のもと、誰もが同じ仕事を行う

農林中央金庫農林中央金庫(以下、農林中金)は、日本有数の機関投資家です。JA(農協)、JF(漁協)、森林組合など協同組合組織(会員)から資金運用を任されており、その名は広く海外にも知られています。各組合に還元される運用益は、農業、漁業、林業発展のために使われていますから、農林中金は日本の第一次産業を金融面から支えていることになるわけです。

農林中金の職種は、「総合職」「地域専門職」「地域業務職」の3つに分かれています。
「障がいのある方は、いわゆる一般職にあたる地域業務職を選ばれる方が多く、その場合、仕事は各種事務が中心です。この職種は、本人の同意がなければ転居を伴う転勤はありません。本店地区であれば、勤務地は東京有楽町の本店、大手町のJAビル、もしくはシステム部門がある江東区の豊洲ですし、支店での採用であれば、その支店で働いていただくことになります」
人事部人材採用班 部長代理 榊原浩美氏は、職種と勤務地をこのように話されました。

「配属に際して、まずは一人ひとりの障がい内容と併せて、必要となる配慮をうかがいます。配属先の部門長(部長)には、障がいのことと配慮について、事前に説明をします。外見から障がいの有無がわからない方の場合、障がいのあることを職場のどの範囲まで知らせるかは、ご本人の希望に従います。中には部門長と業務のライン以外には知らせないでくださいという方もいらっしゃいます。こうした配慮以外は、担当する仕事は他の方と全く同じです。この点は、以前から変わっていません」(榊原氏)

榊原氏が言われる“以前”とは、何十年も前のことです。農林中金は、聴覚障がい者の雇用に長く取り組んでおり、その中には間もなく定年を迎える方もいるとのこと。農林中金の「仕事は同じ」には、歴史の重みが感じられます。

「しかし『事務職』と聞くと、『仕事の幅が狭いのではないか』と考える方がいるかもしれません。ところが、決してそうではありません。代表的な仕事だけでも『窓口業務』『営業事務業務』『外為業務』『マーケット業務』『総務・人事業務』などさまざま。ジョブローテーションもあり、幅広い業務を担っていただきます」(榊原氏)

新入職員から経営層まで行われるどの研修にも
「障がい」に対する理解を浸透させる講座が組まれる

農林中央金庫「当然、必要な配慮はいたしますが、障がいの有無で業務内容に変わりはありませんので、採用活動の際、私たちがもっとも大切にしているのは『どんな仕事がやりたいか』という点。それをきちんとうかがったうえで配属を決めていく。やりたい仕事に就くことができれば、当然、モチベーションは上がるはずです」

これは、榊原さん同様、人事部人材採用班 調査役の日比野真吾氏のお話です。続けて日比野氏は、「同じ職場の仲間なのだから、仕事にもその内容にも差がないのは当たり前でしょう」と言います。

日比野氏が指摘した「仲間意識」について、榊原氏は次のように話します。
「農林中央金庫は、総資産こそメガバンクの少し下にランクされるほど大きなものですが、職員数は約3500人と一桁少なく、それだけに昔からどの職場もアットホームな雰囲気。これが互いのことを考え、チームで仕事を進めていくという土壌を形づくっているのです。また、障がいのある方を職場が受け入れることで、この土壌がさらに強くなるとも思っています」

仕事について、「ジョブローテーション」に話が進みました。
「3年から5年のサイクルで、部署が変わります。現在の仕事に関係する分野でも構わないのですが、できるなら未知の仕事も希望していただきたいと考えています。現在、農林中央金庫そのものの業務が拡大してきており、それと並行して地域業務職の仕事領域も広がっています。未経験の仕事も多くなりますので、それに就くことで新しい自分を発見することがあるはずです。チャレンジしていただくことがご自身の成長につながっていくことを期待しています」(榊原氏)

障がいのある職員が未経験の分野に挑戦し生き生きと働くためには、周囲の理解が必要です。農林中金では、新入職員、3年目、5年目、10年目と、節目での研修を実施しています。そのほか、管理職層、経営層の研修も用意されています。

「すべての研修で人権問題を取り上げており、さらにダイバーシティの一環として障がいに関する講座も設けています。こうして全社で、障がいに関する理解を深めてもらう。これがスムーズな受け入れに大きな役割を果たしていると考えています」(榊原氏)

事業の規模に比して職員数が小規模な農林中金。だからこそ、さまざまな施策が行いやすく、またその浸透も素早いのではないでしょうか。

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