株式会社ゴールドウイン
人事部 人事グループ 人材開発チーム
リーダー
大村 静代 氏
人事部 人事グループ 人材開発チーム
竹内 銀河 氏
日本有数のスポーツウェアメーカーである株式会社ゴールドウインにおける障がい者雇用の根幹にあるのは「コミュニケーションの徹底」です。この“徹底”は、採用活動の段階からスタートします。障がい者採用を担当する、人材開発チームリーダーの大村静代氏は、“徹底”を「話し込み」と表現してくれました。
「従来から当社では、採用活動において障がいの有無で区別をしてきませんでした。特別な採用枠を設けなかったのは、特に意図があったわけではなく、そのような採用のやり方に通じていなかったというのが実情です。それでも、入社から20年を超えて在籍する障がいのある社員が何人もおり、誰もが区別なく仕事に従事しています。これは、当社の採用と雇用に対する考え方に、すべての社員を『同じ環境で共に働く仲間とし、自立した社会人に育てる』いうものがあるためです」
いわば「自然体の採用・雇用」ですが、会社として「障がい者採用」の知識を高めることで転機が訪れました。
「当社では長年、さまざまなスポーツを支援しています。『障がい者スポーツ』もそのひとつ。この支援を採用・雇用にも広げるために、障がい者に特化した採用活動を行うことにしたのです」
その際、「話し込み」はどのように進められているのでしょう。
「障がい者に特化した合同企業面談会に参加し、そこで出会った方から当社の説明会への参加予約を取ります。1回の説明会で来ていただく方は2名から多くても6名。同規模での説明会を何度か行います」
大村氏によると、この小規模での説明会の目的は、「話し込みをやりきる」ことにあるそうです。
「障がいは、その種類や程度によって個人差があります。その個人差に応じて話をうかがうためには、6名が限界と考えました。なぜなら私たちは、説明会の場を『聞けなかったことは何もない時間にしたい』と考えているからです」
大村氏をはじめとする担当者は、一人ひとりに希望する職種はもちろん、個々の障がいにより、できること、できないことを明確になるまで聞いていきます。
「できないことに対して、どんな配慮が必要かを把握します。そして、配慮によりできることを伸ばしていくことを伝えます。配属は希望に適性を加味するだけでなく、場合によっては『あの上司の部署なら力を発揮してもらえる』と、上司との相性まで考慮します。こうした活動がミスマッチの防止につながり、結果として長く働いていただくことにつながると考えています」
とのことです。これは、まさに「話し込みをやりきった成果」にほかなりません。
大村氏と同じ人材開発チームのメンバーである竹内銀河氏は、「話し込み」で入社を決めた1人です。話し込みの相手は大村氏。竹内氏は、視覚に障がいがあります。
「説明会で、私の不安や疑問に対し、一つひとつ懇切丁寧に答えてくださいました。この対応のきめ細かさに、ゴールドウインの人に対する温かさを感じました」
竹内氏は入社3年目を迎える直前、障がいのある学生が参加するインターンシップを担当することになりました。これについて大村氏は次のように話します。
「インターンシップは1日だけの開催です。冒頭は、主に当社の説明で、これは私が担当しました。以後は、竹内君が担当。内容は彼の企画によるものです」
竹内氏の企画とは「話し込み」に関係しています。
「当社のインターンシップは、採用活動や選考のためのものではありません。ですから、採用担当者の立場を優先させるのではなく、障がいのある先輩として就職活動に関するアドバイスを行うという、学生に寄り添った企画を立てました。企画を立てる際、私がこの時期、どのようなことが知りたかったのかを思い返し、何をアドバイスされれば役立つかを考えました」
説明会同様、インターンシップも小規模での実施です。
「具体的には、まず私の障がいの説明から入り、その内容、症状を説明。そして、どんな仕事をやっているかを具体的に伝えました。つまり、障がいに関係なく、周囲と同じレベルの仕事ができる会社が必ずあると元気づけたのです。細かいことでは履歴書の書き方、自分の障がいの説明をどのようにしたら良いかなどのアドバイスも行いました」
竹内氏は、一般採用と障がい者採用の違いについても詳しく説明し、「どちらにしろ、大切なのは障がいの影響によってできないことをはっきりと伝えること。そのうえで、自分のやれること、やりたいことをしっかりアピールすることだと伝えました」といいます。
「同じ環境で共に働く仲間全員」を「自立した社会人に育てる」ためには、周囲が各人の障がいを理解することが不可欠。その企業目的達成のためにゴールドウインでは、入社前の「話し込み」をスタートラインと位置づけているのです。