特集 インタビュー vol.03
2015/09/20

時代のニーズに合った
幅広い分野の
職業能力開発を実践し
社会で活躍できる
人材を送り出す

国立都営 東京障害者職業能力開発校

校長(東京都産業労働局 局務担当部長)
角田 由理子

9,500名に及ぶ修了生を送り出してきた
障害者職業能力開発校

角田由理子校長東京障害者職業能力開発校は、1948年に開設され、今年で67周年を迎える障害者の職業能力開発に取り組む専門機関です。設置は国が行い、運営を東京都に委託。設立以来、時代のニーズをくみ取りながら障がい者の職業能力開発に取り組んできました。

同校の特徴の一つとして挙げられるのが障がい種別に応じた各種科目の設置です。1988年には知的障がい者のための「実務作業科」、1997年には重度視覚障がい者のための「OA実務科」、平成20年には精神障がい者訓練の試行を開始し、2013年には精神・発達障がい者のための「職域開発科」などを新設しています。

「東京だけでなく関東をはじめ全国から生徒を募っています。当校は寮も完備していますので遠方地から入校する生徒も多くいます。このように広い地域から就労意欲のある障がい者を受け入れて、有為な人材を社会に送り出すことが当校の使命です」

と語るのは東京障害者職業能力開発校長の角田由理子氏。すでに9,500名に及ぶ修了生を社会に送り出すなど、その使命を果たしてきました。

様々な障がい者を対象に
時代のニーズを踏まえて幅広い職業の能力開発に取り組む

東京障害者職業能力開発校現在、東京障害者職業能力開発校では11系17科目を設置しています。基本的な事務スキルや就業に必要な社会生活スキルを習得する「就業支援系」をはじめ、ビジネスアプリケーションの開発に必要となる知識を学べるビジネスアプリ開発科がある「情報系」、ビジネス経理やビジネス文書を学ぶ「ビジネス系」、医療保険事務などを学ぶ「医療事務系」、DTPソフトなどを学べる「グラフィックメディア系」、設計関係の知識と技術が学べる「CAD系」、各種製造の技術が習得できる「ものづくり系」などがあります。さらに「職域開発科」では、ビジネスマナーやコミュニケーション能力を身につけ、就業への理解・認識を深めることができます。その他にも「実務作業科」など、幅広い科目を用意しています。

「当校の目的は社会で活躍できる職業人の育成ですから、つねに産業界が求める職業や技能分野のニーズをリサーチしながら、時代にマッチした科目やコース設定を心がけています。さらに個々人の障がいに合わせて受講しやすいように工夫も凝らしています」
角田校長がそう語るように、授業では手話通訳者が訓練内容を同時通訳したり、生活面では精神保健福祉士を配置して生徒の相談に応じるなど、きめ細かな対応が図られています。

授業で使用されている機器やソフトは、現在、産業界で利用されているものを使用するなど、技術の習得後は即戦力として活躍できるように機器や教材、カリキュラムも充実しています。同様に「職域開発科」では、実際のオフィスや店舗、物流バッグヤードと変わらない設備を施した教室を用意して、そこで実際に指導員が上司役を演じながらロールプレイングで働く際の様々なシーンを再現した実習を行っています。

校内企業説明会など
修了生の就職支援にも積極的に取り組む

角田由理子校長と外観こうした技能訓練や障がいに合わせた実習と共に、東京障害者職業能力開発校では修了生の就職支援にも注力しています。入校生の受け入れ時にも連携するハローワークとはつねに密接な情報交換をしながら受入企業の開拓などに努めています。また、各企業の人事担当者を招いて校内で説明会を開催するなど、積極的な支援を実践しています。

「平成26年度の修了生の就職率は82.4%でした。おかげさまで毎年80%を超える就職率をキープできています。この数字をさらに上げる努力をするとともに、修了生が働く職域の幅も広げられるように努力していきたいと考えています」

そう語る角田校長は、修了生の就職後の定着率も高めたいと言います。そのためには生徒自身が自らの障がいについて理解することがポイントとなります。そこで同校では、「何ができる」「何ができない」「どんな配慮あるいは支援があればできる」かを自分自身で明確化できるよう指導しています。

そして最後に障がい者を社会に送り出す立場の責任者として、企業に対しては次のようなメッセージをいただきました。

「定着率向上のポイントをもうひとつ加えるなら、受け入れ企業様の意識と環境です。職場内に障がい者の就労を支援する方を配置したり、従業員の理解や体制が整備されることで定着率は大きく変わるはずです。加齢によって障がい内容が変化する場合もあります。一人ひとりの障がいの状況と、適性や能力を理解した上で末永く働ける環境づくりをしていただけばありがたいですね」

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