特集 障がい者が活躍する職場レポート vol.10
2015/12/24

「障がい者と健常者が
共に働く職場を築く」
設立以来の理念を
大切に守り続ける

プロフィール

株式会社JALサンライト

代表取締役社長
下條貴弘

障がいのある社員と健常の社員が同じ職場で
同じ仕事を行うことが相互理解を深め「仕事に
やりがいと喜びを感じる職場」をもたらしている

JALサンライト 株式会社JALサンライト(以下、サンライト)は、日本航空(JAL)の特例子会社として、1995年11月に設立されました。

「当社は、JALの障がい者雇用をJALと共に推進していく役割を担っています」

 サンライトの下條貴弘社長は、グループ内での同社の位置づけをこう話されました。
 「障がい者雇用の推進」を従業員数で紹介すると、スタート時点は13名でしたが、設立20年を迎えた2015年には、およそ10倍の約120名にまで増加。サンライトは、担う役割を十分に果たしていると言えるでしょう。

 設立時サンライトは、
(1)「障がいのあることを仕事の障がいとしない職場を築く」
(2)「障がいがある人もない人も共に協力し合い、仕事に喜びを感じる職場を築く」
(3)「障がいを乗り越え、常に前向きの発想を持ち、活気に溢れる職場を築く」
 という理念を掲げました。この理念が「雇用後のサンライトでの生活」に、どのような形で息づいているのか。これが今回のテーマです。

 サンライトの一つの特徴は全社員に占める健常者の比率が障がい者より高いところにあります。
「当社の事業のほとんどは、JALグループからの業務受託で構成されています。その業務に『障がい者だけ』というものはほとんどなく、いずれも障がい者と健常者が共に同じ仕事を担当しており、この点が当社の大きな特徴です。そして、当社に応募される障がいのある方の中には、そのことを志望動機として挙げる方が少なくありません」(下條さん)

 下條さんが志望動機でいう「そのこと」とは、経営理念の(1)と(2)に示されています。この理念への共感が、志望動機につながっているわけです。さらに理念(2)の後段に記された「仕事の喜びを感じる職場を築く」について、下條さんは次のように説明されました。

「障がいのある社員と健常の社員が一緒に働くことで、相互理解が深まる。さらに、障がいのある社員同士の相互理解も同時に深まっていく。この環境が、『仕事に喜びを感じる職場』をもたらしてくれる、またもたらしてくれているものと考えています」

 インクルージョンとは、「多様な人たちが対等にかかわり合いながら一体化している状態」を意味しますが、それをサンライトでは、会社設立時点で理念として掲げ、実現への努力をたゆまず続けてきたことになります。

システム化、デジタル化、アウトソーシング化の流れを
好機と捉え、将来的には業務システムの運用にまで
受託を拡大させていく方針

 設立から20年(2015年11月現在)、サンライトの歴史は業務内容の拡大と変化の歴史でもあります。この中の“変化”については、サンライトの将来にもかかわる問題です。

「世の中はシステム化、デジタル化、アウトソーシング化の流れを強めています。これにより、たとえば、以前には仕事量が多かった印刷業務は縮小を余儀なくされました。デジタル化のため、お客様へのDMがeメールに、乗務員のマニュアルがPDFによる電子配信になるなど、紙媒体が廃止されたからです。その一方で、JALの航空業務を支える航空券の収入管理や客室乗務員のスケジュール作成という業務が『サンライトに統合する』という方針で、2012年にアウトソーシングされました。また、近年は社内便などがすべてバーコード管理されるようになり、そのシールの確認も行っています。さらに、JALが企画づくりの基礎資料として分析に使う各種データの入力業務の比重が以前より大きくなっているなど、業務にかなりの変化が起こってきているのが現状です」

 このような変化は、ビジネスチャンスをもたらします。

「たとえば、新しい業務を受託する際、その業務に使うシステムを運用する役割をも担う。今後は受託をそのレベルにまでシフトしていくために、さらに研修を充実させることで社員のスキルアップを実現させたいと考えています」

 下條さんは、受託業務の範囲を、より“川上”に近いものにしようと考えているわけです。そのベースとなるのが、理念(3)に記される「障がいを乗り越え、常に前向きの発想を持ち、活気溢れる職場を築く」ことの徹底です。突き詰めていうなら、それは「よりいっそうの人材の活性化」にほかなりません。

「そのためには、障がいのある社員と健常の社員、障がいのある社員同士の相互理解をこれまで以上にしっかりと図っていかなければならないと考えています。そうすれば、彼らが一緒に仕事をすることの成果を、1プラス1が2ではなく、3にも4に拡大できるはずです」

 下條さんのプランを現実化させるには、人材の定着が不可欠となります。

「当社の人事評価は、障がいへの配慮はしますが、それ以外は個々のレベルに応じて行います。仕事が同じであれば、評価基準も同じ。ですから、障がいのある社員の中から13ある業務グループのグループ長や、それを補佐するセクション長というようなマネジメント職も生まれています。また、グループ間の異動も実施。異なる業務を経験するだけでなく、異なるグループの社員と共に仕事をすることで相互理解を深めてもらう。大変ではありますが、やりがいを感じてくれている人が多いのも事実です」

 JALサンライトの企業活動には、「障がいのあることを仕事の障がいにせず、障がいのある人もない人も共に協力し合う」ことで「仕事に喜びを感じる」という理念が常に脈打っていることを実感しました。

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