特集 障がい者が活躍する職場レポート vol.12
2016/08/30

「日本一働きがいの
ある特例子会社」を
目標に“協働”を
推進する

プロフィール

株式会社博報堂DYアイ・オー

取締役常務執行役員
薗部 真志
経営計画管理課 人事・採用G
安部 ちひろ

ホールディング化による企業統合とグループ企業形成に際し
特例子会社「博報堂DYアイ・オー」をシェアドサービスの中核に据える

博報堂DYアイ・オー株式会社博報堂DYアイ・オー(以下、アイ・オー)が博報堂の特例子会社として誕生したのは、1989年12月。当時の社名は「博報堂アイ・オー」でした。“アイ・オー”とは、INPUT・OUTPUTの頭文字から取ったもので、入力・出力・確認の作業が業務のベースになっていることを表しています。

2003年10月、業務提携を行っていた博報堂、大広(D)、読売広告社(Y)が、共同持株制により経営統合。博報堂DYホールディングスが設立されました。アイ・オーの現社名への変更は、3年後の2006年10月のことです。アイ・オーの業務は、3社の経営統合以降、一挙に拡大していきます。拡大のキーワードは“シェアドサービス”です。

「3社の統合で“博報堂DYグループ”が形成されました。従来、当社が博報堂から受託していたのと同種の業務が、大広にも読売広告社にもあります。こうしたグループ各社の間接部門での共通業務を受託することで、俄然、アイ・オーの業容が広がることになりました」
こう話すのは、取締役常務執行役員の薗部真志氏です。

シェアドサービスとは、薗部さんが言われるように、グループ内企業に共通する間接部門業務を統合することで、業務の効率化やコスト削減をはかることを意味します。そのシェアドサービスの核に特例子会社を据える。これは、障がい者雇用拡大に関する新しい施策にほかなりません。あらためて言えば、博報堂DYグループの形成は2003年、アイ・オーの社名変更は2006年です。この3年のタイムラグについて、薗部さんは次のように話してくださいました。

「3社統合後、様々な調整や帳票類の共通化・業務フローの統一化など、シェアドサービス実施に関して3年の時間を要しました。3年の期間をかけ業務が共通化・集約化・統一化され、その業務の受託が可能になったことで“DY”を加えての社名変更になったわけです」

統合の際、3社のメディア部門を分割する形で博報堂DYメディアパートナーズが設立されました。同社は、メディア・コンテンツビジネスに特化した企業です。
「メディアにかかわる業務の受託は、特例子会社の中でも他に例を見ません」と薗部さん。アイ・オーの業務受託は“俄然”拡大したわけです。

多角的観点からアイ・オー独自の価値観を構築し
「企業としてきちんと評価される特例子会社」への成長をめざす

博報堂DYアイ・オー「1989年、アイ・オーは社員数14名、うち障がい者7名で発足しました。7名は全員、聴覚障がいの方です。2016年6月末現在、社員数は135名。内訳は、聴覚障がい36名、視覚障がい14名、上下肢障がい・体幹などが8名、内部障がい3名、精神・発達障がい10名の71名、健常者64名です。障がい者雇用グループ適用対象9社の社員数は約8100名で、雇用率は2.15%となっています」(薗部さん)

設立からおよそ27年、社員数は約10倍、障がいのある社員も同じく10倍に増加しています。また、障がいの内容も聴覚のみから大きな広がりを示しました。そして、グループ雇用率は2%を超えており、アイ・オーは特例子会社の役割を十分に果たしていると言ってよい現況です。

「ただ、危惧するのは、障がい者の雇用は特例子会社のアイ・オーに任せておけばよい、という意識が親会社など適用対象企業の中に生まれることです。そのようなことにならないよう、私たちは9社に対し『自社でも障がい者雇用に積極的に取り組み、有望な人材を採用してください』と要望しつづけています」(薗部さん)

博報堂DYグループへの障がい者雇用に関する啓蒙。アイ・オーでは、これも特例子会社として自社の果たすべき役割としているわけです。

このようにグループ内での障がい者雇用の拡大をいっそう推し進めていこうとするアイ・オーの掲げる目標は「日本一働きがいのある特例子会社」の実現です。

「すでにアイ・オーでは、健常者と障がい者の“協働”が定着しています。“協働”の定義は『障がい者と健常者が、賃金体系・人事制度・評価制度などすべての面で同等の条件と環境のもと、協力して業務を進める』というものです。具体的には、全部署で障がいのある社員と健常の社員が能力と経験に応じて同じレベルの業務に携わっているだけでなく、障がいのある社員が健常の社員に仕事を教える光景も珍しくありません」(薗部さん)。

経営計画管理課の安部ちひろ氏(聴覚障がい)は、この「珍しくない光景」で現場最前線でバリバリ働き、時には指導的ポジションも務める中堅社員の1人です。安部さんによると、アイ・オーは「ここ数年で大きく変化してきている」とのことです。

「業務領域が広がるのと併せ、障がいのある社員も増加しています。その方たちの障がい内容もさまざま。また、私のような聴覚障がいの場合、会議や部会、外部の方とのミーティングなどの場では必ず手話通訳が同席してくれます。情報保証がしっかりしていて評価制度も平等、公平ですから安心して働くことができる。このようなアイ・オーの働きやすい環境に、私はもっとも魅力を感じています」

入社から12年、いくつもの部署で異なる業務を経験してきた安部さん。現在は2014年に発足した人材開発部も兼務し、経営計画管理課で採用を担当しています。

「今年(2016年)の8月にはじめて実施した障がいのある学生を対象としたインターンシップは、企画段階から安部が中心となって進行しました」(薗部さん)
「インターンシップの期間は、土日を除く7日間。社会人としてのマナーを身に着けてもらうなどのオリエンテーション、現場での4日間の実習に加え、アイ・オー独自のワークショップ研修に関する計画も行っています」(安部さん)

「アイ・オー独自のワークショップ研修」とは、現社長の田沼泰輔氏が起草した経営理念の中にある「障がいの有無にかかわらず、社員一人ひとりが誠実に行動し、自律した個人として自己成長に前向きに取り組むことで会社も発展する」という、アイ・オーのフィロソフィーにのっとったものです。この研修の最後に「私のアイ・オー宣言」を発表します。ちなみに、田沼社長の名刺の裏には、「私の誠実さは」をテーマとするアイ・オー宣言に関して「共に豊かさを分かち合うこと」と記されています。

2006年の社名変更以後、アイ・オーは業容を大きく拡大させました。そして田沼氏が社長に就任した2012年からは「日本一働きがいのある特例子会社」をめざし、業容拡大に加え、理念、制度、人材開発など多角的な観点から独自の価値観を構築しています。「企業としてきちんと評価される特例子会社」への成長に向け、アイ・オーは今後も進んで行くことでしょう。

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