特集 障がい者が活躍する職場レポート vol.15
2019/09/20

障がいのある社員が
能力を発揮できる
環境づくりによって
幅広いサービスを提供

プロフィール

NTTクラルティ株式会社

取締役 企画総務部長
矢畑 一夫

NTTグループの高い技術力と障がい者の個性を
融合させた幅広いサービスを提供する

やばたさん2004年に日本電信電話(NTT)の特例子会社として設立されたNTTクラルティ。設立時はわずか3名だった障がいのある社員は、15年が経過した現在では322名に上ります。障がいの内訳も、肢体不自由、内部障がい、視覚障がい、聴覚障がい、精神障がい、知的障がいなど多岐にわたり、それぞれの障がい内容とマッチングを図った仕事を創出し、質の高いサービスを展開しています。

短期間で急成長を遂げてきたNTTクラルティの経営理念は「社員一人ひとりの働き甲斐(輝き)を通して、バリアのない豊かな社会の実現に貢献します」。この経営理念を具現化するために、障がいのある社員が働き甲斐のある仕事と環境を生み出し、特例子会社として成長を遂げてきました。

「当社が提供するサービスは、NTTが持つ技術力と障がい者の個性を活かしたものが多いのが特徴です。その背景には、設立以来、親会社であるNTT、関連会社のNTT東日本と密接なコミュニケーションを図りながら、当社ならではのサービスを開発してきたという経緯があります」

そうNTTクラルティのサービスに対する基本姿勢を説明するのは取締役企画総務部長の矢畑一夫氏です。その言葉通り、同社のサービスは多岐にわたり、Webアクセシビリティ診断やバリアフリー化支援業務、ポータルサイト「ゆうゆうゆう」の運営、障がい理解研修、心のバリアフリー研修、障がい者採用支援コンサルティング、障がい者によるモニター機能の活用など多彩なサービスを提供しています。これらの多くは障がい者の視点や体験を活かしたサービスです。

「例えば、Webアクセシビリティ診断は、そのWebサイトに高齢者や障がい者がアクセスしやすく利用しやすいように配慮や工夫がされているかを診断するサービスです。企業や自治体を対象に、色のコントラストや音声読み上げソフトに十分対応できているかなどの観点からアドバイスを行っています。NTTのIT分野におけるノウハウと障がい者の視点を融合させたサービスとして、多くのお客様から信頼を得ています」

Webアクセシビリティ診断と同様に、バリアフリー化支援業務や障がい者に役立つ情報を発信するポータルサイト「ゆうゆうゆう」の運営、障がい理解研修・心のバリアフリー研修など、様々な障がいのある社員の視点や経験を活かしたサービスを提供することで、経営理念でもあるバリアのない豊かな社会の実現に貢献しています。

障がい者が能力を最大限に発揮できるように
きめ細やかな配慮と創意工夫を施した環境を創出

NTTクラルティWeb分野をはじめ障がい者の視点や経験を生かしたサービスを展開するNTTクラルティでは、その他にもNTTグループを対象にしたコールセンタ業務、名刺作成業務、DM送付、通信設備建設工事や通信設備運営管理に関する社内外の申請・通知・工事発注・支払いなどの事務処理業務を請け負っています。

NTTクラルティ「そのような事務業務以外にもいくつかのユニークなサービスを提供しています。その代表的なものがものづくりや健康増進サービスでしょう。当社の塩山ファクトリー(山梨県)では、知的障がいのある社員による手漉き紙および手漉き紙を利用した製品づくりが行われています。カードケース、はがき、一筆箋など品質の高い製品を作り、NTTのノベルティとして人気も高まっています」

もう一つは視覚障がいのある社員が提供するオフィスマッサージです。複数のNTTグループの事業所内にあるリラクゼーションルーム「Riang(リアン)」を設置して、国家資格を保有する多くのヘルスキーパーがNTT社員に日頃の疲れを癒すマッサージを行っています。

「このように当社では様々な業務やサービスを行っていますが、どの業務も社員の障がい内容とスキル、そして業務内容を照らし合わせて適材適所で人材を配置しています。もちろん、障がいのある社員が最大限に持っている力を発揮できるように設備や支援機器などのハード面をはじめ、様々な配慮も行ってきました」

NTTクラルティNTTクラルティ例えばハード面での配慮として、廊下は車いすが2台すれ違う幅を確保し、執務するデスクに向かうための曲がり角には厚みの異なるカーペットを敷いて視覚障がい者が判別できるように工夫を凝らしています。また、車いすでもコピーを取りやすいように低いコピー機の導入や入退出の際のカードをかざすカードリーダーも低い位置に設置するなどの配慮もしています。さらに拡大鏡、筆談器、音声読み上げソフトなどの支援ツール、聴覚障がい者が会議に出席する際は手話通訳士が同席してサポートするなど、障がい内容に合わせた支援を行っています。

一方、ソフト面での配慮に関しても積極的に取り組んでいます。
「定期的な通院や時短勤務などの制度のほか、特に現在力を入れているのが定着支援です。やはり長く働くことは、社員の成長につながります。そうした社員一人ひとりの成長が、最終的には企業力全体のアップにつながり、グループ全体の成長へと発展していきます。そのために、精神保健福祉士や臨床心理士による定期的なフォロー面談を行っています。また、誰もがいつでも相談できるように、定着支援担当による『つなぐ相談室』の運営、外部の支援機関との連携によるフォローなど、さまざまなサポートをしています。上長や定着支援担当、支援機関、さらには主治医などが連携することで、誰もが働きやすい『就労環境』を継続的に構築することが大切だと考えています」

こうしたきめ細やかな配慮によって、障がいのある社員が持っている潜在能力を最大限に発揮させることができます。それが、幅広い分野における質の高いサービスの実現につながっています。障がいのある社員400名体制をめざすNTTクラルティは、今後も新たなサービスの創出やさらなる質の向上に取り組んでいくことでしょう。

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