特集 障がい者が活躍する職場レポート vol.17
2020/11/12

職員自らが
自主的に
環境改善に
取り組む

プロフィール

株式会社スミセイハーモニー

代表取締役社長
鎌田 恵徳

適性に合わせてステップアップできる仕組みが
職員のやりがいを生み出す

かまたしゃちょう株式会社スミセイハーモニーは、より多くの働く意欲のある障がい者に対して雇用の場を提供することを目的に、住友生命グループの特例子会社として2001年に設立されました。その社名には、「さまざまな方がお互いの個性を理解し、支え合い、尊重し合うことで最高の『ハーモニー(Harmony=調和)』を奏でる会社をつくる」という理念が込められています。

「最高のハーモニーを奏でるためには、お互いを理解し合うことが大切です。そして、お互いを理解し合うためには、コミュニケーションを図ることが不可欠だと考えています。自分の障がい特性を理解して相手にしっかりと伝える。その上で相手の個性も理解し、お互いを尊重し合いながら業務を進めることで、活気ある職場が生まれます。障がいの有無に関係なく、長く働き続けるためには、精神的安定にくわえて、仕事においてやりがいや働く喜びを感じられるかどうかが重要です。互いにできないことをフォローし合いながら働くことで、できる業務が増えていきます。できる業務が増えれば、達成感を感じることができ、さらに上の業務を一緒に考えるようになります。そうした職場をつくることが、『働く意欲のある方に雇用の場を提供する』ことを目的とした当社の使命だと思っています」

そうスミセイハーモニーの在り方を話されるのは、代表取締役社長の鎌田恵徳氏です。仕事においてやりがいや達成感を感じられるように、同社では業務に合った評価を見える形で実感できるキャリアアップ制度を設けています。

「誰にでもできないことはあります。そこで当社では、できることには一生懸命に取り組み、できない部分はお互いにカバーし合うことで組織として目標を達成できるように、一人ひとりの適性に合わせた業務をお任せしています。そのために一つの業務でも細分化して、それぞれの担当を決めています。一つの業務をマスターし、物足りなさを感じる職員に対しては、より高度な業務をお任せします。そうすることで、誰もが活躍できる会社を実現しているのです。その上で、トレーナー、グループ長などの役職を設け、自分が実際に行動する立場から後輩を指導したり、グループをまとめる立場へとステップアップできる仕組みを作っています。また、例えばマネジメントが苦手な方なら、専任プレーヤーとしてステップアップできる制度も設けています」

鎌田氏の言葉通り、同社では意欲的にキャリアアップをめざす職員が多数在籍し、現在20ほどで構成されるグループをマネジメントするグループ長や課長代理などは、全員障がいのある職員が務めているそうです。

相談しやすく自主性を重んじる
環境づくりに同時に取り組む

スミセイハーモニースミセイハーモニーでは特例子会社として、誰もが働きやすいように充実した設備を用意しています。ビル入り口から全フロアのバリアフリー化、障がい者用トイレや駐車場などの設置、パトライトを用いた時刻案内、朝礼やミーディングなどにおける手話通訳士の同席、音声変換ソフトの導入など、能力を発揮するために必要な環境が整っています。しかし、鎌田氏は誰もが安定して長く働くためには、ハード面だけでなくソフト面の整備が重要だと語ります。

スミセイハーモニー「身体ももちろん大切ですが、長く働く上でさらに重要になるのが、心のケアだと考えています。そこで、職員の働きやすさを支援するための取り組みを積極的に進めています」

その取り組みの一つが、専門支援員を中心に組織されたダイバーシティ推進室の設置です。

「大抵の組織が、困ったことがあれば上司に相談するのが普通だと思います。でも当社には、『困ったことがあれば、誰でもいいので一番相談しやすい方に積極的に相談しよう』という風土があります。極端な話をすれば、直接代表者である私に相談しに来ても良いのです。特に、上司や同僚に関する相談は、同じグループ内では相談しにくいこともあります。そこで登場するのが、いつでも気軽に相談できるダイバーシティ推進室の支援員です」

スミセイハーモニーダイバーシティ推進室は、障がい者支援経験者や精神保健福祉士、臨床心理士、手話通訳士などの専門支援員と、住友生命本社で長年業務を行ってきたエキスパートなどのメンバーで構成されています。誰もが利用できる相談窓口として、産業医との連携やメンタルヘルス、職場定着支援などさまざまな役割を担っています。

「月に100件ほどの相談があると聞きます。その相談内容はさまざまで、定着支援のために定期的に面談の機会を設け、その時の困りごとを聞くなどのフォローも行っています。もちろん、解決できることは入社していただく前の解決をめざすため、各支援員は採用にも携わり、配属先とのマッチングを図ることもしています」

スミセイハーモニーまた、同社では障がいのある職員自らが職場環境の向上に取り組むことも重要だと考えています。その取り組みの一つが、職場でのコミュニケーションを良くするための「職場コミュニケーション向上委員会」、より活気ある職場を実現するための「職場活性化委員会」、職場環境を向上させるための「職場環境向上委員会」で構成される委員会運営です。

「三つの委員会は、委員長も含めすべて障がいのある職員で組織を構成しています。周囲が強制的に変えていくだけでは、本当の意味での職場環境の改善にはなりません。職員が自主的に動き、全員で意見を出し合いながら組織を変えていくことで、環境改善だけでなく職員の成長、しいては会社としての成長にもつながっていきます。当社ではそれぞれの委員会や各グループ長が中心となり、さまざまな研修や勉強会を行うことで、働きやすい職場とはどんな職場かを職員全員が考える機会を設けています」

この3委員会とは別に、現在は総合的な役割をもつ従業員代表委員会もスタートしています。労働条件について勉強し、会社の環境をより良く変えるための提案を会社に上げるための委員会として運営されています。

「もちろん、より良い組織づくりには終着点がありません。現在も当社で培った障がい者雇用のノウハウを住友生命グループ全体に共有する取り組みを行っていますが、まだまだ不足していると考えています。また、現在の時世を考えたテレワークやサテライトオフィスの推進、精神面・経済面含めてさらに安心して勤務できる環境の整備など、挙げ始めるとまだまだ取り組まなければいけないことが多数あります。今後も一人ひとりが活躍し、人として成長していける環境づくりに取り組んでいきたいと考えています」

職員全員で「ハーモニー」を奏でることで、誰もが輝ける環境へ。スミセイハーモニーの挑戦はまだまだ続きます。

この記事をシェアすることができます。

トップに戻る

特集 障がい者が活躍する職場レポート BackNumber