特集 障がい者が活躍する職場レポート vol.18
2024/11/20

「和」の精神による
社員同士の助け合いで
障がい者の
職場定着を実現する

プロフィール

電気硝子ユニバーサポート株式会社

代表取締役専務
千坂 貴
障害者雇用統括部長
中﨑 法子

「和」の精神を共有することで
誰もが働き続けたい会社をめざす

千坂貴氏1949年の創業時のラジオの真空管用ガラスに始まり、時代のニーズを敏感にキャッチしながら様々な分野のガラスを提供してきた日本電気硝子。今では同社の製造したガラス製品は、自動車、エネルギー、医療、半導体、ディスプレイ、情報通信、社会インフラ、家電·住宅設備など幅広い分野に提供されています。

ガラスづくりを通して社会貢献してきた日本電気硝子の特例子会社として1980年に設立されたのが電気硝子ユニバーサポートです。現在は、上下肢、内部、聴覚、知的、精神障がいのある72名の障がい者社員が働いています。しかも日本電気硝子グループは障がい者雇用率「4.6%」という法定雇用率の2倍近く高い目標を掲げるなど、積極的に環境整備に当たってきました(2024年6月1日現在の障がい者雇用率:4.01%)。

「ただし、当社では単に雇用率を上げるだけでなく、企業理念に掲げている『和』の精神をモットーにして、従業員一人ひとりが能力を発揮しながら社会に貢献することをめざしています。『和』とは、「和やかな」、「穏やかな」という意味のほかに「仲が良い」という意味があり、全社員が協力しながら『誰もが働き続けたい会社』をめざし、様々な取り組みを行うことで、より多くの障がい者を雇用できる環境を整えてきました。また当社では、障がい者の方が安定した生活基盤下で就労できるよう、全員を無期雇用の正社員として受け入れています」

そう人材に対する考え方を説明するのは、電気硝子ユニバーサポート代表取締役専務の千坂貴氏です。また、同社では設立以来、障がい者が活躍できる職域拡大に努め、現在では清掃作業、ワックス掛け、緑化業務、作業服などのクリーニング、工場で使用する軍手や保護具などの縫製業務、社内メール便、印刷、保管資料のPDF化、ポジフィルムのデータ化など、業務は多岐に渡っています。

「障がい者社員によるジョブサポーター体制」と
「ナチュラルサポート」が職場定着につながる

中﨑法子氏そして、障がい者が活躍できる業務の拡大とともに力を注いできたのが職場定着です。まず、職場定着につながっているのがミスマッチを防ぐ選考プロセスです。中途採用については、実習とトライアル雇用を経てからの本雇用という段階を踏むことで、適性の確認や求職者の業務に対する知見を深めてもらい、入社後のミスマッチを防いでいます。また、新卒採用についても、在学中に実習体験をする機会を設けて仕事内容や職場の雰囲気を知ってもらうようにしています。

「さらに障がい者雇用の専門部署として、2020年には障害者雇用統括部という部署も立ち上げました。これは元々業務部という部署の中の1チームとしてあったものを格上げして新設しました。この『障害者雇用統括部』を中心にしながら、障がい者の職場定着のための施策を全社的に検討する『障害者職場定着推進委員会』、下部組織として事業所ごとに『地区定着推進委員会』を設けています。さらに各職場単位では、障がい者のサポート役である社員(サポーター)が『サポーター会議』を行い、それぞれが連携して障がい者の職場定着につながる環境整備を推進してきました。特に各委員会やサポーター会議の場では、全社的方針のもと障がい者に関する様々な事項について意見交換をしながら職場定着のための改善に取り組んできました。また、職域拡大についても、各職場において各々の障がい特性に応じてできることを洗い出し、今までやったことのない業務の内製化を図ってきました」

体制強化による職場定着や職域拡大への取り組みについて説明するのは障害者雇用統括部長の中﨑法子氏です。さらに同社では、障がい者による、障がい者のサポート体制の構築をめざし、2015年にジョブサポーター選任、2021年には「ジョブサポーターキャリアアップ制度」を導入しています。

「当社では、障がい者が障がい者をサポートする考えのもと、適性のある障がい者を「ジョブサポーター」に選任し、他の社員の補佐役や、障がいのある他のチームメンバーに対する業務指導を行う役割を担っています。こうした役割は他の社員の業務負担を軽減するだけではなく、障がい者本人のスキル向上にもつながります。ジョブサポーターの体制が定着後は、「ジョブサポーターキャリアアップ制度」を導入しました。この制度は、チームメンバーに対する指導の成果や技能習熟度でジョブサポーターのレベルを定量的に評価し、4段階のグレードで認定します。この認定は処遇にも反映されます。このように、ジョブサポーターは、障がい者社員のキャリアパスの在り方を示すロールモデルとなり、モチベーションの向上に役立っています。一方、障がいのないその他の社員はサポーターとして障がい者と共に働くことで障がいに対する知見を深め、障がい者へのナチュラルサポートのあり方を学び、実践してもらっています。こうした活動を通して、障がい者社員とその他の社員がお互いに協力しながら働くことの意義を理解してもらい、職場定着につなげています」(千坂専務)

このように、同社は体制の整備や独自制度の導入など、様々な取り組みを実践し職場定着に対する成果を上げてきました。そして、今後もより多くの障がい者雇用を行うとともに、活き活きと働いてもらうためにさらなる職域の拡大を図り、多様化するニーズに応える方針を掲げています。同時にハローワークや支援機関、特別支援学校など、外部の機関との綿密なコミュニケーションを継続することで離職防止や採用の強化を図る予定だといいます。40年以上にわたり障がい者が活躍できる環境を整えてきた同社ですが、今後も障がい者雇用率「4.6%」という高い目標をめざして力強く進んでいくことでしょう。

この記事をシェアすることができます。

トップに戻る

特集 障がい者が活躍する職場レポート BackNumber