株式会社NTTドコモ
人事部
人事企画担当課長
秋和 洋 氏
人事部
人事採用担当課長
田中 三喜子 氏
人事部
人事企画担当
南 昭成 氏
今回、人事部の秋和 洋氏、田中三喜子氏、南 昭成氏のお三方にお話を伺いました。
「社員尊重」を掲げるNTTドコモでは、「人材の多様性を活かし、誰もが誇りをもっていきいきと働くことができる会社をめざして、社内環境の整備、コミュニケーションの活性化に努めています」とホームページに記しています。この前段にある「人材の多様性を活かし」に関して、田中さんから次の説明を受けました。
「当社の企業理念は『新しいコミュニケーション文化の世界を創造する』というものです。私たち採用担当者の役割は、この理念に共感していただいた上で、入社後、理念達成に向けご自身の力を発揮していくことができる人材の採用です。その中に、男性も女性も、外国人も、健常者も障がいのある方もいらっしゃいます。障がいも多様性という面では一つの個性ととらえており、したがって、求める人物像はもちろん、仕事内容、研修もまったく同じです。ただ、ミスマッチはお互いにとって不幸の原因となりますから、会社説明会や面接の場では、『まったく同じ』の厳しさについてもしっかり伝えるようにしています」
この「平等・公平」は、障がいの種類や等級についても「基本的には同じです」と秋和さんは話します。
「しかし、障がいについては個々で事情が異なりますので、その対応は欠かせません。安心して働き、活躍できるように、一人ひとりの事情にあわせてしっかりと配慮していきます。
配属予定の部署に来ていただき、仕事をやる上で何か課題があったら、当該部署と我々が連携し、課題の克服・解決をはかっています。また、多様性への理解を全社的に深めてもらうため、WEB上で実施している研修の際、障がいのある方を含むダイバーシティ関連の情報を人事から提供しています」
障がいのある社員との「共生」「共働」。これについて話を伺っていく過程で、田中さんが興味深い事例を紹介してくれました。
「私たちは採用と併せ若手社員の育成を担当しています。育成の面談時、心臓に障がいのある技術系の社員がこんなことを言ったのです」
以下はその要約です。
「障がいをオープンにすることで、職場の人たちに障がいの状況を理解してもらっています。しかし、それが逆に遠慮を招き、たとえば『過度の残業は難しい』が『残業はまったくできない』となるなど、自分ができるレベルの仕事であってもまわってきません。私も迷惑をかけてはいけないと思い、皆さんの遠慮に従っていました。転機は同期入社の人間のひと言で訪れました。それは『本当はもっとできるんじゃないのか』というものでした。『そうなんだ』と自分の気持ちを打ち明けると、彼は『だったら、ちゃんとそれを周りに伝えていけよ』と背中を押してくれました。そのアドバイスのとおりに伝えたら、『そうなのか』ということで、以後、やれるレベルの仕事が円滑にまわってくるようになりました」
過剰なケアが、コミュニケーションに壁を作ってしまったわけです。
「自分はここまでできる、これ以上は何らかのサポートが必要ということをきちんと伝えるようにする。それをもっと徹底させていきたいと考えています」と田中さんは強調してくれました。
南さんからも「なるほど」という事例を伺うことができました。
「ドコモショップのサポートを担当する部署にいる聴覚障がいの社員のケースです。ミーティングなどの席で、しばしば話の内容が聞き取れないことがありました。しかし彼女は、一方的に何かをしてもらうことではなく、聞き取れた個所はちゃんとノートに書き、上長に『ここまでしか聞き取れませんでしたので、これ以外のところを埋めていただきたいのですが』と申し入れたのです。彼女の申し入れを受けた上長は、自分で埋めるだけでなく、その作業を周りのスタッフにもやらせるようにしました。その結果、スタッフ全員の聞き取りの曖昧さが消え、全員のミーティングの内容の理解度が深まったそうです」
彼女の聴覚障がいという個性が、コミュニケーションに関し周囲の人々の活性化につながった好例です。「新しいコミュニケーション文化の創造」を標榜するNTTドコモにふさわしいエピソードといってよいでしょう。