ソニー生命保険株式会社
人事部 人材開発課
統括課長
西春 謙一 氏
障がい者の雇用について『可能性に重きを置く』採用を行うソニー生命保険株式会社(以下、ソニー生命)。 その代表的な取り組みとして、事務系職種の雇用拡大とヘルスキーパーの拡充があります。まずはこの2点について、本社社員の採用や育成を担当している人材開発課統括課長の西春謙一さんに話をうかがいました。
「本社には、人事、経理、総務といった管理部門の他に、生命保険に関するさまざまな処理業務を行う部門など、事務を担当する部署が100以上あります。現在のところそのすべてで障がいのある方を受け入れられているわけではありません。まだ受け入れ実績のない部署については、人事から積極的に働きかけることで開拓を進めていこうと考えています」
採用活動に当たり「できるだけ可能性を広げることを心がけている」と、西春さんは話します。
「就業経験のある方に関しては、経験や能力を十分にヒアリングした上でその方に合った部署を紹介しますが、就業経験のない方や、また就業経験はあっても事務の経験がないという方でも、可能性を含めどんなことができるのか、面接を通じ確認していくようにしています。たとえばPCが得意ならシステム開発に関連する業務や営業を支援する企画部門のデータ処理業務などがあり、実際、未経験からそうした部署で活躍されている方もいます」
ヘルスキーパーの拡充については早い段階から積極的に取り組んでいます。
「従業員に対する福利厚生と併せ、視覚障がい者の採用を進める目的でヘルスケアルームを設けたのは、1996(平成8)年です。スタート時は本社1カ所のみで、マッサージ業務を行うヘルスキーパーも3人でした。それが今では全国8拠点で26名のヘルスキーパーが業務に従事しています。従業員は週1回を限度として就業時間内でもサービスを受けても良いという制度面でのバックアップもあり、利用者は年間延べ2万2000名を数え、稼働率も85%超と非常に高い水準を維持しています。また利用者からの評価は上々で、ヘルスキーパーとヘルスケアルームをもっと増やしてほしいという要望が寄せられており、それに応えるべく募集を行っています」
「当社では、障がい者に対しても『ここからここまで』と業務の範囲を限定することはありません。最初に担当した業務でスキルが向上すれば、その上のレベルの業務を任されるようになります。もちろん、自分から業務範囲の拡大やレベルアップを希望することも可能です。このように徐々に新しい業務に挑戦してもらうことで、可能性は大きく広がっていきます。多くの候補者とお話をしていく中で、この前向きでチャレンジングな社風に魅力を感じてくださる方がとても多いですね」
これが「可能性に重きを置く」ソニー生命の雇用姿勢であり、それが応募者の「なぜソニー生命なのか」という志望動機につながっていくわけです。
「最初は小さなものかもしれませんが、その部署の一員として責任をもって仕事にかかわってもらいます。“自分が戦力になっている”という意識をもって主体的に業務に取り組み、その成果を仲間と認め合う中で、より大きなやりがいにつながっていくのです」
主体的な挑戦の例として、西春さんはヘルスキーパーの事例を紹介してくれました。
「ヘルスケアルームの管理・運営に関し、今ではそのほとんどを視覚障がい者のメンバー自らが行っているのですが、これはメンバーからの『自分たちでやらせてほしい』という申し入れによるものでした。自分たちでヘルスケアルームをより良くしていきたいという強い思いからの申し入れでしたので、それならばと任せることになりました。また、現在年に2回、全国のヘルスキーパー全員が集まり開催している、マッサージや接客の技術向上のための相互研鑽研修も、一部サポートはありますが、基本的に内容はすべて自分たちで企画し、運営そのものもメンバーが行っています。さらに最近では、自身が在籍した盲学校から生徒の職場訪問を受け入れることで後輩に道を拓き、ヘルスケアルームの拡充をはかろうとしています」
ヘルスケアルームでの実績を重ねることで、「もっと自分たちにできることはないか」という、挑戦する意識が飛躍的に向上していったのです。
「キャリアプランも、障がいの有無は一切関係ありません。私たちは、一人ひとりとしっかり向き合い、その方にふさわしい活躍の場を探し提供する。採用活動も入社後についても、常にそのことを考えています」
最後に西春さんは「今ソニー生命で活躍してくれている障がい者は大勢います。ただ、志高く当社に入社して活躍したいという方も、世の中にはまだまだたくさんいらっしゃるはずです。私たちは、そうした前向きで向上心のある方々ともっともっと出会いたいと思っています」と語ってくれました。