株式会社マイナビ
管理本部 採用研修部
部長
藤本 雄 氏
就職は「企業で働く」ためのスタートラインです。当然、企業は採用した人材が戦力として活躍してくれることを、つまり成長への上昇カーブを描いていってくれることを期待します。人材もそのつもりで仕事に取り組むのはもちろんでしょう。こうして就職は「就労の継続」と言う”定着”へとつながっていくわけです。しかし、現実はそれほどスムーズなものではありません。期待通りの採用ができたにもかかわらず、肝心の定着に結びつかないこともあります。これは障がい者を含め全社員にいえることです。
「当社は障がいのある社員の定着に関しては、ほとんど心配していません」
こう話されるのは、株式会社マイナビ(以下、マイナビ)の管理本部 採用研修部 部長の藤本雄さんです。
「もちろん、退職される方は皆無ではありません。理由の多くは体調の悪化によるものです。残念ですが、仕方ありません。仕事や職場環境への不満が退職の引き金になることもありますが、当社の場合、このようなミスマッチに類することで辞められる方はほぼいません」
そもそもマイナビは、離職率の低い企業です。
「たとえば、新卒者(新規大学卒業者)における入社3年後の離職率は、よくいわれる一般的な数字の半分以下です。定着に関する特別なことはなにもしていないのですが、年度によって若干の変動はあるものの、ほぼこの数字で推移しています」
「新卒、中途を問わず、当社は障がいのある方にとっても働きやすい環境だと思います。なぜなら、新しい仲間を積極的に受け入れるマインドを全社で共有しているからです。もちろん、配属前には、当該部署に障がいの内容や必要となる配慮についての広報を行います。ただ、事細かに配慮を説明しなくても、職場のスタッフがその方に応じたサポートをごく自然にやってくれています」
一例を挙げると、聴覚障がいの新メンバーが配属された場合、会議の場で同僚が自発的にノートテイクを行っているとのことです。
「配属された現場に任せるのが基本。そして、私たちが常に介入してサポートしなければ定着に齟齬をきたすという状況はまったく起こっていません」
藤本さんは淡々とこう話されます。
先のお話で藤本さんは「新しい仲間を積極的に受け入れるマインドを全社で共有している」といわれました。では、この”マインド”はどこから生まれたものなのでしょうか。
「それを明確に説明するのはなかなか難しいですね…。全社員の約4割が中途入社ということで、様々な経歴や経験を積んできた多様なスタッフが集まっているため、新しい仲間に対して拒否感がないのも一因になるかもしれません。また、当社の社員は外部の方から『人が良い』としばしばいわれます。どんな依頼でも、積極的に引き受けるタイプが多いということもあるかもしれません」
続けて藤本さんは「当社の事業内容も関係しているのではないでしょうか」といいます。
「当社では『人材を通じてクライアント企業の価値を高める』という採用活動に関するサポート事業を長年にわたり行っています。人材側のサポートは、求職者が生き生きと働ける場をどう提供するか。クライアント側のサポートとしては、そうした人材の採用を通じて企業をどう発展させていくかということになります。こうした事業の対象は、あくまでも人。事業を動かしているマイナビのスタッフは、日常的にさまざまな人とかかわっているわけです。自分がかかわる人に対し、常に関心をもち続け、自分に何ができるかを考え実行する。当社の”マインド”が醸成された背景には、こうしたことが大いに関係していると思います」
社員一人ひとりが人とのかかわりを考えるという社風が、定着を活動化しなくても長く働いていける環境を作り上げているのです。
「私たち人事部門は、配属先を信頼しています」
藤本さんのこの言葉は印象的でした。