NECネッツエスアイ株式会社
人事部
労政・ダイバーシティマネジメント推進グループマネージャー
秋元 浩 氏
人事部
人事課長
井芹 由起子 氏
現在、一般企業の法定雇用率は2.0%。雇用率達成のための取り組みについてNECネッツエスアイ(以下、ネッツエスアイ)の話をお聞きました。
お話をうかがった時点(2014年12月)から3年ほど前のネッツエスアイの雇用率は1.67%。そして2年半前が1.8%で、改正前の雇用率を達成。さらに現在では2.05%と改正後の雇用率を上回っています。
「ここまで雇用が進んだ最大の要因は、トップダウン。『障がい者の雇用促進に全社で取り組む』という方針がトップから打ち出されたからこそ雇用率が急速に改善され、ひいては法定雇用率達成に至ったわけです」
労政・ダイバーシティマネジメント推進グループマネージャーの秋元浩氏は、開口一番、このように話されました。方針を積極的に打ち出したのはもちろん社長です。しかしそれは単なる“号令”だけにとどまるものではありません。
「社長が示した方針に従って、人事担当の執行役員である常務が細かな活動施策を出しました」
活動施策を各事業部門に下ろすとともに、それがどのように実行され具体的に成果を挙げているかは、半期に一度(年間2回)開かれる全社委員会の場で発表されます。
「委員会には各事業部門の執行役員と計画部門の部長が出席し施策の実行と成果を発表。加えて、毎月開かれる部長会議でも活動状況と成果が報告される仕組みです。障がい者雇用の促進は、私たち人事のスタッフの活動だけで実現できるものではありません。重要なのは『全社で取り組む』というトップの意思表明とそれを浸透させるための具体的な施策、そしてその実行なのです」
秋元さんはトップダウンの重要性をこう強調されます。
委員会と部長会議でのトップの方針浸透は、広い意味での啓発活動と言ってよいでしょう。ネッツエスアイのこうした広義・狭義両面での啓発活動は、人事により裾野を広げられてきています。これについては人事部の井芹由起子課長にうかがいました。
「たとえば、階層別教育の中で障がい者雇用について積極的にふれることで、障がいのある方たちと共に働くことの重要性を考えてもらうようにしています」
「障がい者との共働」という面では、ダイバーシティも啓発活動の一翼を担っています。
「ダイバーシティはNECグループ全体での活動と位置づけられており、当社でも多様な個性のある方と働くことについての啓発活動を実施。一例としては、毎年NECグループでは多様な方たちと共に働く、共に社会を築いていくことをテーマに標語を募集しており、当社も参加しています。今年は『多様性を企業成長に結び付けるには』という内容の標語が上位にきました」
こうした啓発活動は、障がい者の採用、配属、そして“定着”へと発展させていくためのものでもあります。
「当社では障がいのある方の採用は、配属先を固定せずに行っています。個々の適性や障がい内容、希望等を勘案し配属可能な部署を探します。もちろん、処遇に他の社員との差はまったくありません」
「配属部署を探す」と言っても、闇雲に当たるわけではなく、部門の人材に対するニーズに沿ってすり合わせを行っていくのです。
「人員が足りている部門に話をもっていっても仕方がありません」と井芹さんは話します。要するに人事の担当者は、人材に関する各部門のニーズに精通していてこそ配属できるわけです。
一方、部門の長に関しても「障がい者雇用が全社の方針ということで、自分の部門では受け入れ可能かどうかを真剣に考えてくれています」と秋元さんは語ります。
定着の促進では、人事による「入社後面談」も重要な施策です。
「面談は、入社後半年たったところで行います。この時期が定着に向けて大切と考えているからです。本人の障がいの状況、通勤の負荷、仕事の内容、職場の人間関係など、ヒアリングは多岐にわたります。障がいの内容や配慮については事前に配属先に知らせていますので、仕事に関する話が多いですね」(井芹さん)
「本人はやる気満々なのに障がいに気を使いすぎてか仕事の内容が物足りないということもあります。もっと仕事をやらせて欲しいという希望です。この場合は、配属先にもっと仕事を与えて欲しいという要望を伝えます」(秋元さん)
もう一つ、“定着”に貢献してくれると思われるものに「見学会」があります。
「面接に来ていただいた方に、限られた範囲ではありますが社内を見学してもらっています。見学を通じて当社で働くイメージを醸成してもらい、志望レベルを上げていただきたいと考えているわけです」(井芹さん)
井芹さんは「志望レベルの向上」と言われましたが、「こういう職場、こういう会社で働きたい」という動機付けは、入社後の「この会社で長く働きたい」という定着に関する意識の向上にも一役買ってくれるはずです。
最後に、井芹さんの印象深い一言を紹介します。
「多様な個性の方々と一緒に働くという環境が社内に浸透していくことで、障がいを意識することなく、無意識の中で共に仕事をしていくようになる。ということが当社で実現できればと思っています」