「一般財団法人 日本海事協会(NK)」のメインクライアントは、世界の海運・造船・保険業界です。船舶の安全確保と環境保全を目的に設けられた規則が、建造時と就航後に適用されていることを証明する検査を実施しています。現在、NKの船級登録船数は約9000隻、総トン数は約2億4000万トンに上っています。登録船腹量の世界シェアはおよそ20%でトップクラス。このようにNKは、押しも押されもしない世界最大級の船級協会です。世界に120を超える専任検査員事務所を置いており、このサービスネットワークは現在も拡大を続けています。
そんなNKの障がい者雇用のベースにあるのは「NKファミリー」という伝統です。
「これは、ずいぶん以前からある考え方で、職員一人ひとりを家族とし、よりやりがいのある業務環境とそれを行うための職場環境の実現を常にめざしています。多様な個性の受容ということでは、まず外国籍の職員。当会の総職員数は1700名。うち外国籍の職員はおよそ700名です。そして現在、多様性を広げるため、障がいのある方の採用に力を入れています。“障がい”という個性を受け入れることで職員同士が刺激し合い、共に成長していく。このようにありたいと考えています。他の職員も障がいのある同僚から学ぶことが多いはずです」
こう話されるのは、人事部の鳴瀬晶次長です。
NKでは職員の定着について、「採用後1年間は、月に一度のペースで人事によるフォローアップ面談を行っています。面談に先立ち、配属部署の上長から各人の状況に関するレポートを上げてもらい、その内容とご本人の要望をうかがうことで面談を進めていきます。面談で出た要望などは部署にフィードバックし、必要な改善やサポートの実施をお願いしています」とのことです。
月に一度と頻度の高い面談ですから、仮に問題が生じたとしても、それが大きくなる前での対処が可能になります。この職員に対するクイックレスポンスの姿勢は、NKにとってお客さまに対する姿勢にもつながっています。
「事業が船舶の検査ということで、組織は技術職中心に構成されています。しかし、技術職がお客さまに対して早急に対応するためには、事務部門のサポートが不可欠。技術部門と事務部門が連携を取り、早急に対応することでクイックレスポンスを実現し、お客さまの満足度向上をもたらす。このお客さまの満足が、当会の使命である、船舶の安全確保と環境保全という目標の実現に貢献することにつながっています」
そんな技術部門をサポートする事務部門では、障がいのある職員が活躍しています。
「障がいのある方には総務・経理・財務・船舶関連業務等、事務系職種に就いていただきます。当会では障がい、国籍に関係なく、誰もが『NKファミリー』の一員として確かなやりがいと強い意欲をもって業務に取り組んでいます」
NKファミリーの一員、つまり家族を助けることに対して、同会では努力を惜しみません。これがNKの風土です。
「誰もが得意なこと、不得意なことがあります。ですから、慣れない業務や不得意な業務に関して無理はさせず、必ずサポートをつけることを各部門の上長にお願いしています。これが社内の雰囲気をよくし、一人ひとりの意欲向上につながる。長く勤務する職員が多いのは、そんな理由からでしょう。さらに長く働きたい方に対しては、本人の意思、スキル等を考慮し、正職員としての登用制度も用意しています」
全世界の船舶にサービスを提供するNK。その裏には、誰もが責任ある仕事に携わり、確かなやりがいを感じながら業務に取り組むことができる環境がありました。