株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント
総務人事部 2課
担当課長
大月 健志 氏
総務人事部 1課
笹本 里佳 氏
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は、『プレイステーション(略称PS)』を作っている会社です。会社をイメージするにはこれだけで十分ですが、もう少し付け加えると「プレイステーションに関するハードウェア、ソフトウェア、コンテンツ、ネットワークサービスの企画、開発、販売」を事業としています。
いうまでもなくSIEは家庭用ゲーム機のリーディングカンパニーであり、またPS4の世界実売台数は4,000万台を超え、多くのユーザーからの支持を集めています。
SIEの障がい者採用について、総務人事部2課の大月健志担当課長によると、
「配属は体調管理やサポート内容に応じて相談のうえ決定します。また、業務遂行上、必要なサポートはできる限り行います」とのことです。
つまり、個別対応です。これは、同社が掲げる「(管理部門を含む)全職種がクリエイター」として、「世界でいちばん面白い、世界が驚くエンタテインメントを創り、世界中のユーザーに届ける」ために、自分の能力を最大限に発揮できるフィールドを用意しようとする同社の姿勢の表れです。
「このコンセプトに共感し、それを実現するためのチャレンジ精神にあふれ、仕事に情熱を注ぐことのできる方にとって、SIEは絶好の活躍の場になるでしょう」(大月さん)
そんなSIEのホームページを閲覧すると、「えっ? “あれ”が見当たらない」と思う人がいるはずです。“あれ”とは「企業理念」。見当たらないのは当然で、もともとSIEに企業理念はありません。「なぜないのか」と尋ねたところ、大月さんは「若干の私見も入るが」と断ったうえで、次のように説明してくれました。
「多くの方からよく『どうして企業理念を作らないのですか』と聞かれます。以前、経営陣の一人と話をしていた時、そのことにふれるシーンがあったのですが、『あえて掲げない』とのことでした。これは、1995年創業時のトップたちの意思によるものだと言います。エンタテインメント、つまり“遊び”の世界のビジネスがどう変化していくのか、先々まで予測するのは困難です。だから、たとえ企業理念を掲げたとしても、それが社員のモチベーションを喚起し続けることができるのかどうか。このビジネスだからこそ、やりたいこと、めざす夢は多様。その多様さを大切にし『世界でいちばん面白いエンタテインメントの創造』をエンジンとしていけば、会社は前に進み続けます。それで良いではないか、という考えだったようです」
プレイステーションを世に出した創業時なら、PSが今拓こうとしているエンタテインメントの世界に照準を合わせた企業理念を掲げることも可能だったかもしれません。しかし、現在SIEは、プレイステーションネットワークという事業分野を構築し、たとえば、双方向性――まさにインタラクティブな――ゲームでプレイヤーの感情を揺さぶり、また、バーチャルリアリティ(VR)でゲームの世界に入ったかのような体験まで“遊び”のビジネスとその可能性を拡大してきています。この環境に、20年前の経営理念がマッチし続けられたどうか。かえって創造性を縛ってしまわなかっただろうか。微妙なところです。
SIEの職種は「事務系(総務、人事、経理、営業事務、一般事務など)」「技術系(ソフトウェア、ハードウェア、ネットワークなど)」「制作系(ゲーム制作、各種デザインなど)」の大きく3つに分かれています。いずれの職種でも障がいのある社員が活躍していることはいうまでもありません。
「ネットワークにつながっている機種は膨大な数に上ります。そこにプレイステーション独自の面白くも魅力あるコンテンツをどれだけ提供していけるか。今プレイステーションは、まったく新しいビジネス分野に入ってきています。当然、技術系、制作系のスタッフはそれに対応すべくふさわしい体制を整えてきているわけです。そして、総務、人事、経理といった管理系もこの新展開と無縁ではありません。とにかく、サポート体制が以前とは一変しつつあるのです。したがって、既存の仕組み、やり方などが通用しない。なぜなら、SIEの事業展開が、今までのビジネスの延長線上にないダイナミックなものだからです」(大月さん)
既存のものが通用しないというほどの“大きな変化”とは、“乱世”にたとえることができるでしょう。乱世では「出る杭」は「さらに伸びろ」と歓迎され、平凡とは一線を画する「とんがった個性」が活躍の場を得る。ただでも「出る杭」や「とんがった個性」が力を振るうSIEの風土です。今後はますますそうした人材にとって、やりがいが大きくなることでしょう。
そんな「とんがった個性」の実例として、総務人事部1課の笹本里佳さんは次のように話してくれました。
「経理部門の社員ですが、アメリカに赴任、活躍された後、次はブラジルでのビジネス立ち上げに奮闘されています。ブラジルでのミッションは工場の立ち上げなので重責ですが、四苦八苦しながらもがんばってくれています。SIEの社員は障がいの有無に関わらず世界各国で活躍しています」
ゲームの世界は、インターネットを通じて参加プレイヤーが増えるほど、想像力の競い合いになります。片やゲームを提供する側、つまりSIEにもそれを上回るほどの想像力が求められる。だから、制作、技術、管理を問わず全社を挙げてクリエイティブであれ。外側からのぞくだけでも面白そうなSIE。中で働ければ、水を得た魚のように「最高」という人は決して少なくないでしょう。