パナソニック エイジフリー株式会社
執行役員 採用部
部長
木村 聡志 氏
パナソニック エイジフリー株式会社は1998年、訪問入浴介護サービス事業を皮切りに、有料老人ホームの運営・介護用品の開発・販売・バリアフリー化住宅リフォーム事業など介護保険制度のもとで事業を広げてきました。パナソニックが創業当時から培ってきたものづくりの技術、生活空間づくりの技術を活かし、デイサービスやサービス付高齢者向け住宅、小規模多機能型居宅介護施設など、全国で多くのサービス拠点や介護ショップを運営しています。2017年現在4400人以上の社員が、それぞれの地域の中で高齢者とその家族の生活を支えています。
「特に介護業界にとっての事業の要は“人材”だと考えています。障がいの有無にかかわらず、すべての社員ができるだけ長く意欲的に、そして幸せに働いていただきたい。それが会社の基本的な雇用に対する考え方です」
と語るのは、採用部部長・木村聡志さん。介護業界における人材確保がますます重要となる中、パナソニック エイジフリーでは、みんなが働きやすい職場であるために、さまざまな工夫をされています。その中で、障がいのある社員も本人の意志や希望をできるだけ尊重しながら、配属先や職種を決めていると話されます。
「介護職に就かれる方々は、現場で介護をするスタッフも社内で働くスタッフも同様に“困っている人を助けたい”という気持ちにあふれています。そのため、職場でも自然に助け合いの姿が見られます。障がいがあるという理由だけで特別扱いするのではなく“自分ができることでみんなの役に立つ”という自然な形で支え合うことができている職場だと感じています」
2017年11月、パナソニック エイジフリーは、介護職者を対象に「時間制正社員制度」を導入することを発表しました。2017年時点では業界初となる試みだといいます。これは、勤続一年以上のパートタイム職員が、月給制の正社員と同水準の賃金で、時給制で勤務時間を選ぶことができるという制度です。これまで正社員だった職員が家庭の事情などで正社員として働くことが難しくなった場合には、退職することなく勤務時間を短くでき、かつ昇給や退職金にかかわる勤務実績は、正社員と同じように評価・査定されます。
「一般的に多くの介護現場では離職率の高さが問題となっています。その中で、いかに優秀な人材を長期間確保できるかということは、介護業界が抱える共通の課題です。それがサービスの品質につながるからです。それぞれのライフステージや健康状態などに応じて、今までのキャリアを途切れさせることなく仕事が続けられるこの制度は、従来の勤務体系から抜きん出た、先駆的な取り組みだと考えています。この制度を利用することで、例えば子育て中や介護中の社員、障がいのある社員など、さまざまな事情や特性のある社員が、さらに自分に合った形での勤務が可能になると考えています」
パナソニック エイジフリーで働く障がいのある社員は、本社での事務職のほか、介護現場で活躍する社員もいます。
「介護職は、その職種の特性上、サービスを利用される方も健常でない場合がほとんどで、肉体労働となる場面も多くあります。そのため、障がいのある方が働くことは難しいと言われてきました。しかし当社では、スタッフの数が比較的多い施設などで、他のスタッフと協力し、創意工夫を凝らしながら十分に力を発揮していただいています。その人の特性に合った仕事の内容にすることで、障がいのある社員でも無理なく高齢者の生活を支えることができます。一人の社員として成長できるよう職場環境を整えることで、仕事への自信と責任感を育むことができると考えています」
木村さんは今後、さらに活躍できる職域を増やしていきたいと話されます。
「介護業界は、今後ますます需要が増え、当社の社員数も増えてきています。その中で、職場としてさらなる多様性の推進に取り組む必要があると感じています。現場で活躍される障がいのある社員は、現時点では限られた施設だけになりますが、例えばリネン類の洗濯業務など、外部委託していたものを社内業務として運営することで、さらに多くの場所で活躍していただけるでしょう。本社でも同様に業務を整理することで、より多くの人材を受け入れることができると思います。障がいのある方を含め、多様な人が働く場を創出するのが今後の課題だと考えています」
2025年には全国で30万人以上の職員が不足すると言われている介護業界。多くの事業者が人材不足という危機感を持つ中で、パナソニック エイジフリーは新たな制度で、人材の確保と定着に取り組んでいます。障がい者雇用についても、行き届いた配慮に加え、誰もが平等にチャレンジできる機会を作ることで、より働きやすい職場環境作りに取り組んできました。最近では、高等支援学校からの就業体験の受け入れにも力を入れているという木村さん。介護業界における障がい者雇用の先駆的企業として、今後もさまざまな取り組みをされることでしょう。