障がい者雇用の取り組み vol.078
2018/08/30

「代田イズム」のもと
誰もが活躍できる
風土が生まれる

プロフィール

株式会社ヤクルト本社

人事部 部長
松本 正俊
人事部 人事課 主事補
舩内 寛之

「予防医学」を志し
ヤクルトの創始者となった医学博士の代田 稔
その「代田イズム」が働きやすい企業風土の礎となる

まつもとさんとふなうちさん2018年8月現在、株式会社ヤクルト本社(以下、ヤクルト)では、約50名の障がいのある社員が働いています。

「当社には、障がいのある方だけの部署も業務もありません。役割やキャリア形成などに関する人事制度はすべて共通です。求めることは、本店・全国の事業所という配属された職場で、チームの一員として戦力となって業務を遂行していただくこと。つまり、ご自身の能力を最大限に発揮して活躍していただくことです。
一方、採用選考時には必ず常勤の保健師が面談を行い、障がいの内容と必要な配慮事項を専門的な面から確認しています。そのため就労後、私たち人事部による個々の方に対してのフォローがしっかりと実施できるわけです。また、ご自身の障がいについて相談事があった場合、顔見知りの保健師がいることで安心して入社できる、就労できる環境が整っていると考えています。さらに職場での必要な配慮に関しても、周りの人たちが必要かつ十分なサポートを実行しています。もちろんこれは、皆さんを貴重な戦力と期待しているからにほかなりません」
こう話されるのは、人事部長の松本正俊さん(写真左)です。

松本さんによると「お話をしたことは、全社、全従業員に共有されています」とのことです。そして「共有」の背景を形づくっているのが「代田イズム」にあると強調されました。

ヤクルトの創始者は、医学博士の代田 稔(しろた みのる/1899~1982)です。代田が子どものころは、衛生環境や栄養状態が劣悪でした。そのため、多くの人々がコレラや赤痢などの感染症で命を落としていました。こうした状況を憂えた少年時代の代田は、のちに医学の道を志し、京都帝国大学(現在の京都大学)へと進み、病気にかからないようにする「予防医学」の研究を始めます。そして1930年、消化液に負けずに生きて腸に到達する乳酸菌(現在の乳酸菌シロタ株)の強化培養に成功し、さらに5年の歳月を経て乳酸菌飲料「ヤクルト」が誕生しました。

「代田イズム」は、「予防医学」「健腸長寿」「誰もが手に入れられる価格で」の三つ。さらに「真心」「人の和」なども加わります。
「“真心”と“人の和”は、代田の想いに根ざしたものです。『和をもって接すれば、自然と和が返ってくる』。この『代田イズム』を全従業員が有し実行しているからこそ、誰もが安心して一緒に働ける企業風土が生まれたのだと考えています」(松本さん)

自身の能力を最大限に発揮できる職場環境
このフィールドが定年まで職務を全うする
多くの人々を生んでいる

ふないさん代田イズムとともに大切にしているものが、ヤクルトの企業理念とコーポレートスローガンです。
企業理念では「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します。」と謳っています。コーポレートスローガン「人も地球も健康に」には、「ヤクルトは、水、土壌、空気、動物、植物、そして人々が織り成す社会、これらすべてが健康であって初めて、人は健康的に生活できるのであり、健全な社会が築かれるのだと考えています」という意味が込められています。

「企業理念の実現のために、我々自身がやらなければならないのは、従業員自身の健康保持・増進です。その考えのもと、2017年9月15日に『健康宣言』を策定しました」
とは、人事部人事課の主事補、舩内寛之さん(写真右)です。

「健康宣言」には「従業員の心身の健康保持、増進および安全・安心な職場環境づくりに努めます」とあります。

「ヤクルトは、飲料メーカーの概念を超えて、健康にこだわった事業を行っています。そのため従来から健康宣言に示されたことを実行してきました。それをさらに強化するのが、健康宣言の目的です。具体例を挙げると、勤怠管理のチェックを通じての残業削減と年次有給休暇の取得を促進し、いずれも成果をあげています」(舩内さん)

ヤクルトは、従来から「障がいのある人が、自身の能力を最大限に発揮できる企業風土、職場環境こそ“健康”の大きな要素である」として、その形成に注力し、雇用を積極的に行ってきました。言葉を換えるなら、「代田イズム」とそこから導き出された企業理念、コーポレートスローガン、健康宣言のいずれもが、そうしたヤクルトの「健康思想」、つまりは障がい者雇用への取り組みの現在につながっていると言って良いでしょう。

「障がいのある方の早期退職は、ほとんどありません。長期在籍はもちろん、定年まで職責を全うされる方がほとんどです。こうしたこともあり、働く環境は整っていると自負しています。今後は、さらに多くの方にこうした環境の中で活躍していただきたい。担当する私たちにとって、それが大きな願いです」
舩内さんはこのように話を締めくくりました。

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