明治安田システム・テクノロジー株式会社
人財マネジメント部長
井上 隆司 氏
明治安田システム・テクノロジーは、明治安田生命グループのシステム開発・保守を全面的にサポートしている会社です。同社の障がい者雇用に関するキーワードは“コミュニケーション”です。
現在、多くの企業が、ダイバーシティ&インクルージョン、つまり「多様な人材が企業活動に参画し能力を発揮する機会を得る」という理念を標榜し、その実現に向けさまざまな施策を推進しています。明治安田システム・テクノロジーの場合、その根幹に置いているのが“コミュニケーション”です。
「当社はシステム開発に携わる会社です。採用職種の中核はシステムエンジニア。SEの業務でとりわけ重要になるのが、コミュニケーション力です。業務のスタートは、クライアントとの対話を重ねること。それによってクライアントがどんなことに困っているのかを明確に把握していきます。この対話では、クライアントの業務プロセスを熟知することが欠かせません。その結果、クライアントが求めるシステムの方向性が本来の優先順位とズレていることを発見した場合は、『まずこちらを優先させるべきだと思います』と提案し納得を得る。ここまで詰めたうえで仕様書作成に入るわけです」
こう話すのは、人財マネジメント部の井上隆司部長です。このように「クライアントの困りごとをシステムで正しく解決するために最適な仕様書は、コミュニケーションの集積によって作成される」と言っても過言ではありません。同社の事業推進とコミュニケーションは不即不離の関係にあり、したがってダイバーシティ&インクルージョン、今回のテーマである障がい者雇用の推進でも同様の位置づけとされるのは当然のことなのだと思います。それに関連する施策の一つについて、井上部長は以下のように紹介してくれました。
「当社では年度始めの目標設定、中間フォロー、年度末評価の3回の面談を行っています。これに加え障がいのある社員に関しては、面談の機会をさらに増加させました。まず、所属部署の上長との面談を通じて解決しなければならないことの有無をうかがいます。問題があればその情報は人財マネジメント部にあるダイバーシティ推進チームに上げられる。それが健康面に関する懸念であるなら、保健師との面談を設定します。そして保健師が必要と判断した場合に、産業医につなぐわけです」
この施策も、きめ細かなコミュニケーションの重要性への認識があってこそのものです。
同社では、将来にわたって障がい者雇用を継続していく方針です。その際、不可欠としているのが、障がいに関する全社的な理解。この「全社的理解」に関する取り組みについて井上部長にうかがいました。
「2017年から、『障がいを理解しましょう』という趣旨でこれまでに6回、全社メールを通じて情報を提供しました。内容は、たとえば外見からは把握しにくい『内部疾患とはどのような障がいなのか』、また『精神障がいとは』と、障がい別に内容を紹介し、その障がいが仕事にどのような影響があるのか、なぜそうなのかなどの説明により、周りの人たちに理解を促す一助としたのです。障がいのある方が全部署に配属されているわけではありません。しかし、今後はそのような部署へ配属が行われる可能性があります。その際、どのような配慮が求められるのか、知っているのとそうでないのとでは対応の仕方、スピードに違いが出てくるかもしれません。今回の情報提供は、その面で『全社的理解』を深めてくれたと考えています」
この情報提供は、想定外の効果をもたらすことにもなりました。それは、メールを読んだことで「自分も障がい者なのではないか」と気づき、「障害者手帳」取得を行った社員がいたことです。この“気づき”については、「チャレンジ支援金制度」が挙げられます。
「この制度は、障がいのある社員へのケアを充実させることが目的で設定されました。あわせて、『障害者手帳』を取得した方をしっかりとケアすることも目的としています。これにより、障がいがあるかもしれないが手帳取得の方法がわからないという社員の相談に乗り、本人にその意思があれば取得してもらう。結果として、数名が新たに手帳を取得しています」(井上氏)
支援金の使途に制限はありませんが、「たとえば、自宅をバリアフリー化する資金の一部に使ってもらうなどです」と井上氏は言います。制度のアナウンスは、浸透を図るため数回行われました。コミュニケーションの徹底ぶりがうかがえます。
「コミュニケーションの徹底化」ということでは、社員に対する各種意識調査も重要な施策です。それについて次のようにお話しいただきました。
「年に一度、当社独自の意識調査を行っています。加えて、同じく年に一度、明治安田生命グループ全体での調査、さらに障がい者に関する調査も実施。この三種の意識調査を加味することで、社員が能力を存分に発揮するのに何が不足しているのか、障がいのある社員との協働を円滑に進めるには、どのような施策が必要かを明らかにし、実行していく。こうした活動を行うことで、さらなる雇用拡大を図っています」(井上氏)