障がい者雇用の取り組み vol.086
2019/04/24

「障がいのある人材が
活躍できる会社」
その環境づくりに向け
さまざまな施策を展開

プロフィール

双日株式会社

理事 人事部長
河西 敏章
人事部 採用課
アシスタントマネージャー
遠田 和彰

「個を大切にする」という企業DNAの継承のもと
多様な働き方と働く場の提供を推進

かわにしさん2003年4月1日設立の双日株式会社は、日本に7つある総合商社の中でもっとも若い企業です。その一方、母体となった3社すべてが19世紀半ばから後半の創業であり、さかのぼれば双日の有する歴史は150年を超えています。

「重要なのは、母体3社がいずれも『個を大切にする』を企業活動の中核に置いていたことです。そしてこのDNAは、双日に連綿と受け継がれ今日に至っています」
こう話されるのは、河西敏章人事部長です。
現在、双日の「個を大切にする」取り組みは、「ダイバーシティ」と「働き方改革」によって進められています。

「ダイバーシティも働き方改革も、突き詰めれば多様性の受容であり、これには障がい者も含まれます。多様な人材に対し、その方にふさわしい働き方とその場所を提供する。たとえば、障がいの影響で何かの制約があったとしても、制約を軽減するための的確な配慮とその人にふさわしい業務の提供により、能力発揮の環境が生まれると考えています。そして、ご自身がより仕事をしやすくするための工夫を重ねることで生産性を高めていき、会社に貢献する。パフォーマンスを上げることで自分を成長させ、ひいては双日でのやりがいを拡大させていくわけです。この循環プロセスを、必要となる施策で後押しするのが私たち人事の役目だと強く思っています。」

さらに「ここまでお話ししてきたことのベースにあるのが『健康経営の推進』です」と、河西氏は続けます。

「2017年12月、当社では『双日グループ健康憲章“Sojitz Healthy Value”宣言』を策定し、社内にとどまらず対外的にも公表しました。働き方改革の面で宣言の趣旨を要約すると、『多様な人材が、心身ともに健康で、最大限能力を発揮できる環境づくりを推進する』というものです。この趣旨に沿って言うなら、障がいのある方にとって心身ともに健康で働きやすい環境は、健常者にとっても心身ともに健康で働きやすい環境であるはずです。健常の社員がそう気づくことは、障がいのある社員がどのような事に困ったりどのような配慮が必要なのかという気づきにつながり、最終的には働き方の多様性にかかわる新しいアイディアを生み出すことになるのだと思っています」

双日の「健康経営の推進」は、大きな意味で「いかに多様性の受容を全社に浸透させ、すべての社員が活躍できる環境づくりを実現させるか」に焦点が当てられていると感じました。

「障がいのある方に活躍してもらえる会社でありたい」
そのための活動は、すべて「New way, New value」に集約される

えんださん河西氏には、障がい者雇用に関する双日の基本理念を詳しく話していただきました。次いで話をうかがったのは、採用の現場で活動されている人事部の遠田和彰アシスタントマネージャーです。

「障がいのある方については、当然ながら個々人の特性に応じて必要な配慮を行います。その上で求めているのは、常に他の多様な社員と同等のモチベーションで仕事に取り組んでいただきたいということです。そのため面接では、ご本人のキャリアプラン、つまり将来に向けて双日で『なりたい姿』をうかがうことに時間を割いています。望む形でご本人が成長実感を得られる環境を提供していきたい。この気持ちを堅持して採用に至るなら、その方には長く働いていただけると信じており、この信念のもと採用活動を行っています」

双日には2012年に設立された特例子会社があり、これまで障がい者は主に特例子会社で採用していました。しかし、2018年度から本社でも本格的に障がい者採用を開始しています。
遠田氏によると、「障がいのある方に活躍していただける会社でありたい。そのための環境をどのように作っていけば良いのか」というのが当初からの大きなテーマでした。
「テーマ推進に向け、全社員の一人ひとりにかかわっている人事部門内でタスクフォース(特別任務作業班)を組みました。内容は、採用、人事制度、育成など多岐にわたり、各々にかかわる各課から代表を立て設置されたタスクフォースがまとまって障がいのある方が働きやすい環境の整備に向け活動しています。

現在、これらの活動に加え「増床プロジェクト」がスタートしており、ここでも障がい者の関わりが期待されています。これについては河西氏に話をうかがいました。
「新卒採用の増加などで手狭になったことから、2020年4月に本社が入るビルの2フロアを借り増しすることになりました。その際、障がいのある方々にもプロジェクトに加わってもらうことで、たとえば『このようなファシリティがあったら働きやすい』というような、他の社員では気づきにくいアプローチでの提案を積極的に行っていただきたいと考えています。このプロジェクトは、増床を好機ととらえた、多様な人材の多様な働き方に関する環境整備へのチャレンジにほかなりまぜん。」

たかやまさん増床プロジェクトのチャレンジと重なるのが、特例子会社「双日ビジネスサポート株式会社」の社員、高山ちひろさんへの河西氏からのある申し入れです。
「高山さんの最終面接には、私も加わりました」と河西氏。「全盲の高山さんは、本社のヘルスケアルームでマッサージの施術を担当しています。全盲の方の採用は初めてでした。そこで高山さんに、多様な働き方に関する改革に力を貸してもらえないだろうかとお話ししたところ、『わたしがお役に立てるのであれば、ぜひやらせて下さい』と快諾をいただきました。やっていただいたのは、施術の空いた時間に一緒にフロアを移動していただくこと。高山さんに設備の使いにくい所や改善点を指摘してもらうことで、さまざまな気づきを得る体験をしました。この体験は、障がいのある方を含めた社員全員と双日という企業が共生、共働する為に『人事は何をするべきなのか』と思考する大きな一助になり、これが健康経営への推進にもつながっています。」(河西氏)

現在、高山さんは多くの社員に施術し癒しを与えていますが、ただそれだけではなく、「施術の引き出しを増やしていく」ことを課題とし、それにチャレンジしています。なぜ、このチャレンジをするのか。高山さんは「私はマッサージの専門家ですから、施術後に社員の方から『ほぐれました。ありがとうございます』と言っていただくことが充実感につながります。どんな方にもこう言ってもらえるようにするには、今にとどまることなく施術の引き出しを増やさなければなりません」と力強く話してくれました。

新たな価値を生み出すために双日が掲げるグループスローガンは、「New way, New value」です。そしてここで紹介したさまざまな改革施策や高山さんの活動は、すべて「New way, New value」に集約されているのです。

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