日本イーライリリー株式会社
人事本部 タレントアクイジション&ディベロップメント部長
佐藤 隆博 氏
人事本部 ダイバーシティー&インクルージョン推進 部長
安原 菜津子 氏
日本イーライリリーは米国に本社を置く製薬会社、イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人として1975年に設立されました。以来40年以上にわたって革新的な医薬品を日本の患者さんに提供し続けています。そんな同社では医薬品の提供だけにとどまらず、イノベーションの推進にも力を入れており、そのためには同社で働くすべての人が多様な価値観を互いに尊重し、多様性を受け入れ活用する「ダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)」の促進が不可欠だという考えが根付いています。
「性別や国籍、性的指向、宗教、人種などに関係なく多様な価値観や働き方をお互いに認め合うことが社員や会社の成長につながると考えています。その中には障がいの有無も含まれ、採用はもちろん、入社後の教育にも力を入れ、お互いに成長し合える環境づくりに取り組んでいます」
そうお話されるのは、D&I推進 部長の安原 菜津子氏です。D&I推進では社員一人ひとりが求める働き方を実現しながら活躍できるように、さまざまな支援を行っています。
「障がいのある方の場合、能力を発揮して働くためには何が必要か、まずは採用時にしっかりとヒアリングを行います。そして、せっかく入社されるのですから、できるだけ高いレベルをめざして活躍して欲しいと思っています。そこで、入社後も受け入れ先の上司と情報交換を行い、困りごとに対してどのような対処ができるかを確認しています。相談を待つのではなく、何か困ったことがないか、こちらから発信することで、迅速な対処を心掛けています」
採用前から入社後までの継続した支援の結果、同社ではさまざまな部署で障がいのある方が活躍しています。働き方はそれぞれで、正社員として活躍している方もいれば、契約社員としてサポート業務を行う方もいます。
「私が所属するセントラルサービスチームも、障がいのある方が活躍する部署の一つです」
そう話されるのは、セントラルサービスチーム部長の棚橋 孝太氏です。
「セントラルサービスチームは、できるだけ少人数の社員で利益を追求できるように、全社で発生する事務的業務を一括にまとめて対応する部署です。対応する内容が非常に幅広く、多種多様な業務が発生するために、それぞれが得意なことを活かしつつ、不得意な部分を周囲がサポートできます。障がいの有無に関係なく、誰しも得意・不得意があります。仕事内容が幅広いからこそ、誰もが活躍できる職場となっています」
例えば、車いすを使っている方ならPCを使った業務、外部との会話に苦手意識がある方なら、電話応対の発生しない業務を任せるという具合です。
「外見から障がい内容がわかる方なら、サポートが必要な内容を予想できます。でも、見た目ではわからない障がいの方も多数います。その場合はチームのリーダーがしっかりとヒアリングを行い、何ができて何ができないかを明確にします。そして、苦手なことについて情報共有し合うことで、周囲と補い合える環境をつくっています」(棚橋氏)
同社では、これまでに培ってきた障がい者雇用に関するノウハウを全社的に共有することが大切だと考えています。そんな情報共有の取り組みの一つとして、障がいのある社員で運営するネットワークがあります。
「その社内ネットワークを立ち上げたのは、障がいのある社員自身でした。定期的に情報共有の機会や勉強会を開催し、支援の事例を発表したり、逆に必要な配慮についての話し合いをしています。そこで上がった意見がすぐに社内上層部にも伝わるように、同ネットワークのメンバーには経営層も加わっています」(安原氏)
他の社員の中には障がいのある社員のネットワークにサポーターとして協力を申し出る方もいて、全社ミーティングの際に活動を発表してくれたり、社内のイントラネットを利用して活動報告なども行われているそうです。
「私たちは、人材の多様性が会社に良い影響をもたらすことを知っています。これは米国本社も含めて全社的な共通認識であり、社員一人ひとりが自分の個性を活かし、相手の個性も活かしながら業務に取り組むことで、個人の成長、果ては会社の成長へとつながっていくことを実感してきました。ですから、障がいのある方に関しても、さらに積極的な採用活動を持続していかなければいけないと思っています。例えば、障がい学生を対象にしたインターンシップを開催するなど、これまで以上に新卒採用にも力を入れていきたいと考えています。入社からキャリアプランの実現、社会人としての始まりから終わりまでをしっかりと見守ることが、多様性を重視する私たちの使命だと感じます」(タレントアクイジション&ディベロップメント部長 佐藤 隆博氏)
社員の多様性を受入れ活かすことが、会社の成長へとつながる。同社のその思いは、その先にある、患者さんやそのご家族のより豊かな人生に貢献することへつながっていくのです。