株式会社キューブシステム
総務部長
伊東 順一 氏
総務部 業務支援グループ
担当マネージャー
海保 雅司 氏
キューブシステムは、様々な業種の情報システムを提供しているソフトウェア企業です。1972年の設立以降、様々な技術やソリューションを提供することで、顧客の競争優位を実現するパートナーとして、金融、流通、通信、運輸、官公庁なの多くの企業や組織と信頼関係を築いてきました。また、同社は「総員営業主義」を掲げ、エンジニアが日々の対話の中から顧客のニーズや課題をもっとも理解できる立場にあるという考えから、営業組織を持たずに顧客の課題解決を図っています。
そんな同社では、ソフトウェア企業の最大の財産は人材という考え方から、多様な人材が成長できる環境づくりに力を注いできました。当然、ダイバーシティあふれる人材の中には障がいのある方も含まれ、積極的な採用と職場環境の整備を行っています。
「多くの企業で障がいのある方が成長しながら長く働ける環境づくりに工夫をされていると思いますが、当社は特例子会社ではなく、同じ社内に障がいのある社員が所属して仕事が行える専門組織を作りました。それが2年前に開設した業務支援グループという組織で、社内の他組織との協働及び障がいのある社員が成長する仕組みを構築しています。このグループには現在12名のメンバーが在籍し、そのうち9名が障がいのある社員で、精神障がい、知的障がい、身体障がいのある方々で構成されています。業務内容としては、当社で展開しているシステム開発プロジェクトのPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)をはじめ、社内の事務や環境整備に関わることなど、多岐にわたっています。」
そう業務支援グループ開設の目的を説明するのは総務部長の伊東さんです。プロジェクトを担当する社内の開発部門、あるいは社内の事務部門などと話し合い、業務支援グループで請け負う業務の調整を行っています。
「当然のことながら障がい特性によって得意な業務と苦手な業務があります。例えば、精神や発達障がいのある方は、コミュニケーションは円滑ではないものの、コンピュータやプログラムミングに精通している人も多いので、そうしたスキルを活かせるツール開発やPMOを中心に担当してもらっています。知的障がいの方はコツコツと業務を遂行することが得意な為、社内清掃、名刺作成、郵便物の仕分けなどを中心に担当してもらっています。また、当社の身体障がいのある方は車いすバスケットボールやパラアイスホッケーなど、アスリートとしても活躍しており、広報や採用といった社外向けの業務を担当してもらっています。このように障がい特性や個々の希望やスキルなどを把握したうえで、適材適所で活躍できるように心がけています。」
このように業務支援グループ内での仕事の割り振り方を説明するのは、業務支援グループ担当マネージャーの海保さんです。グループ内では毎日朝会を行い、メンバーの体調確認などを行って1日の業務計画を立てるなど、きめ細やかなマネジメントを実践しています。
業務支援グループが発足して2年、社内の障がいのある社員に対する意識も大きく変化しています。その背景には同社の障がいのある社員への理解を深める取り組みがあります。その代表的なものとしてハローワークで実施している「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」の導入があります。同講座は精神・発達障がいのある方に対する知識と理解を深める講座で、新人研修や部長研修などに組み込むことで、障がいに対する理解を深めています。
「また、当社では積極的にアビリンピックへの参加を行っています。業務支援グループのメンバーがデータベースの分野で全国大会出場など成果を上げていますが、こうした情報は社内サイトにアップすることで障がいのある社員の活躍や高いスキルを保有していることを知ってもらうようにしています。このような情報を定期的に発信することで社内サイトの閲覧数も増えており、社員の業務支援グループに対する理解も深まっていると感じています。その証拠に社内の各組織から業務支援グループへの業務依頼も増えており、他組織との連携業務が拡大しています。」(伊東氏)
加えて業務支援グループに在籍する障がいのある社員の仕事に対する意欲も向上しています。同チームでは各人が具体的な目標設定を行い、その達成度を上長と定期的に確認する仕組みを導入しています。
「精神障がいのある社員の多くは、いずれ業務支援グループを“卒業”して、お客様の課題解決や社内システム構築を図るプロジェクトなどに参加したいという展望もございます。ですので業務支援グループで経験を積んだ後は、社内の各組織に所属するというステップを作り上げていきたいと考えています。同時に障がいのない社員も一時的に業務支援グループに在籍して、障がい特性の理解やマネジメントのあり方を経験して、各組織に戻って障がいのある社員との協働を広げていってもらいたいと考えています。」(海保氏)
このように業務支援グループを有効に活用し、障がいのある社員、そうでない社員の双方の理解を深めることで、同社がめざすダイバーシティ&インクルージョンの推進はさらに加速していくことでしょう。