障がい者雇用の取り組み vol.018
2013/07/19

本社、地方拠点、
国内グループ企業、
海外現地法人へと
雇用促進を拡大する

プロフィール

トランスコスモス株式会社

管理本部 ノーマライゼーション推進部
シニアマネジャー
鈴木 英司

ノーマライゼーション推進部独自で
“Web制作チーム”を立ち上げ、受け入れ部門を拡大

トランスコスモス株式会社現在、障がい者雇用に実績のある企業は多数にのぼります。トランスコスモス株式会社も、その1社です。しかしそうした企業も、当初から順風満帆だったわけではありません。大半は試行錯誤を繰り返し、その道のりの上に現在がある、といってよいでしょう。

業種によって異なりますが、障がい者雇用を進めるにあたって、最初に乗り越えなければならない壁が、「どのような仕事をやってもらったらよいのか」という「業務の選定」と「受け入れ部署の開拓・拡大」です。

すでに管理部門には事務スタッフとして、障がいのある方が相当数在籍していました。それをさらに広げるには、サービス部門を開拓しなければなりません。当社は、ITを駆使したマーケティング・アウトソーシングサービスを事業の核としており、SEにしろプログラマーにしろ、クライアント先での業務が中心になります。障がいのある方をこうした業務に就けようと打診したところ、『それはちょっと無理でしょう』という答えが返ってくるばかりでした」

こう話すのは、管理本部ノーマライゼーション推進部シニアマネジャーの鈴木英司氏です。

「だったら」と鈴木さんは考えました。

「サービス部門に頼らず、まずこちらでサービス業務を行う部署を作ってしまおう。そうして2007年春に発足させたのが“Web制作チーム”です。リーダーには、Webデザインの経験がある聴覚障がいの社員を就けました」

鈴木さんの「論より証拠作戦」は、功を奏しました。

「数名でスタートしましたが、現在では30名近くのスタッフを擁して活動しています」

スタッフの増加は、担当業務の拡大を意味します。

「サイト構築やサーバー管理、公式サイト・キャンペーンサイトなどのデザイン・制作などの他、バナー広告、各種パンフレット、ポスター制作も担当。Web制作チームの波及効果は大きく、『こんなこともやれるのか』というわけで、受け入れ部門が広がりました。その結果、障がいのある方を多数採用できるようになったのです」

全社プロジェクトとして
障がい者受け入れ促進活動を推進中

現在、トランスコスモスでは、障がい者の受け入れ促進活動を全社プロジェクトとして推進しています。

「東京本社と大阪本部での受け入れは、かなり進んでいます。一方で、支社や地方拠点での受け入れ状況は、決して満足できるものではありません」と鈴木さんは話します。

受け入れを促進するために不可欠なのが、障がいに対する理解の浸透です。

「イントラネットに、障がい者雇用に関するポータルサイトを設けました。掲載内容は、日本の障がい者雇用制度、トランスコスモスの障がい者雇用への取り組み、障がい種別ごとの特徴・配慮事項などです。また、全新入社員に対し、入社時研修の際、“ダイバーシティ推進”というカリキュラムで障がい者理解を深めてもらうようにしています」

「障がい者への理解」ということで、なるほどと感心させられたのが、管理本部を中心に実施している全社的な災害対応でした。

「災害発生時、障がいのある方が避難し遅れたら大変です。そうならないよう、障がいのある方が所属している部署から登録制で援護者を複数名選び、一人ひとりの障がいの特性にあった援助を依頼しています。毎年実施される全社災害訓練では、障がいのある方と援護者に参加してもらい、シミュレーションを実施。車いすの方の場合は、更に定期的に昇降機を使って階段での訓練を行っています。車いす1台に支援者が4人付きます」

援護者を務める人は、自分の身体を使って障がいのある方と接します。障がいの理解に、これほど有効な方法はないでしょう。東日本大震災時には、こうした訓練の成果が試されました。障がいのある方は、全員無事に避難を終えたとのことです。

「全社プロジェクトのスタート以後、地方から受け入れニーズが出てきています。今後の大きなテーマは、グループ会社全体としての障がい者雇用の促進です。それに一区切りがついた時点で、雇用促進の取り組みを海外へ拡大させていくことになるでしょう。グローバル化を進める当社では、アジアを中心に現地法人を急増させています。障がい者雇用制度は、国によって異なりますので、現在、各国の制度を集めリサーチしているところです」

「他社に先駆けて雇用に取り組めば、それだけ優秀な人材を獲得することができます」と鈴木さん。トランスコスモスの方針は、「障がいのある人材を雇用後、いかに戦力化していくか」にあります。“Web制作チーム”のように、まず本社が戦力化のための手本を示し、それを国内拠点、国内グループ企業、海外現法がアレンジして独自の戦力化戦略を実行していく。この「理想形の今後」に期待が膨らみます。

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