障がい者雇用の取り組み vol.88
2019/08/22

障がいのある社員
から得た「気づき」
それが受け入れ側の
変化を生み出す

プロフィール

日本たばこ産業株式会社(JT)

人事部長
妹川 久人

一人ひとりとトコトン向き合い
相思相愛で、JTで働いてもらいたい

いもかわさん今回、妹川久人人事部長に話をうかがいました。そこで語られたことの核にあるのは、障がい者を含む「『人財』採用に関して『こうあるべき』という理念」です。

「未来へ向かって活動する企業、さらには日本という国家にとって重要なのは、障がいの有無に関係なく、すべての人に価値提供、価値創造を行ってもらう必要があるということです。すなわち、誰もが現役として能力を発揮してもらう“個”だということです。そう考えれば、障がいの有無、性別、国籍などの“分け方”に重要な意味があるとは思えません。だから、採用という局面であれ、あくまでも“個”として、言葉を換えれば“個性”を尊重する姿勢を堅持するべきだと思っていますし、それを実行しています」

妹川氏の「それを実行している」とはどういうことなのか。具体的に話していただきました。

「当然のことですが、人はその数だけ個性が異なります。それは今日、現在、その瞬間までの、性格を含むもろもろの要素によって形づくられている。大切なのは互いにそれを認め合えることです。この前提だけは担保し続けなければならないと思っています。担保するための基本的なやり方は、採用活動の際、求職者と『トコトン話す』ことです。この『話す』とは、フルイにかける“面接”ではなく、相手への理解をより深めるための“面談”です。そのため、何度も面談を重ねることを大切にしています」

一人の人間を雇用するとは、企業にとって大きな投資にほかなりません。一方、被雇用者にすれば、判断を誤った場合、能力発揮、つまり価値提供、価値創造に対する「あるべき場の損失」につながる恐れがあります。この両者の投資判断を、一度や二度の、それも例えば30分程度の面接で行えているとは思えない。妹川氏は、そう考えているわけです。

「私たちは、たとえば新卒の方であるなら、その年齢時点で見出した個性や能力だけで、今後について『こうであろう』と判断したり、決めつけたりするようなことは絶対にしません。面談などを通じて見出したポテンシャルを可能な限り極大化して、将来像を明確化することをお手伝いする。それを本人が知ることで弊社と自分が合うかどうかをしっかりと判断してもらう。決して合否をジャッジするために面談を行うわけではありません。障がいのある方も、個々人で会社や仕事、さらに成長への姿に対しての考えが異なるのは当然です。これを私たちは素直に受け入れる。その結果、こちらの片思いに終わるか、相思相愛の関係に至るのか、それはわかりません。もちろん、採用を担当する私たちは、相思相愛になるための努力を惜しみませんが、判断は多様な個人に任せるべきだと考え、そこへ至るプロセスについても全員をフォローする。この方針だけは担当者すべてが堅持しています。そこには、本人も気づいていない大変に優れた個性が眠ったままになっているかもしれません。その手ごたえをつかんだら、彼や彼女を眠りから引き起こす。この引き起こしのお手伝いを、私たちはやらせてもらっているのです」

障がいのある社員と接することによる「気づき」が
新たな価値の創造につながる

妹川氏の、つまりはJTの「人財」採用活動が一般とかなり異なることは記述のとおりです。しかしこの「異なり」にはまだ先があります。もちろんそれも、冒頭に述べた「こうあるべきという理念」に合致したものです。

「面談は、想定の時間や回数を大幅に超えることも多々あります。ただ、一人ひとりに応じてのものですから、会話の内容はケース・バイ・ケースでかなり違ってきます。入社後、同期で面談の話になった際、この違いに驚く人も少なくありません。『違う』ということでは、極端な場合、他社の担当者を紹介するケースもあります。面談を通じてトコトン向き合っていると、この人の能力、個性は、当社より他の会社の方が生かせるのではないかと考えられるためです。また、これとは逆のことも起こります。『もしJTから内定をもらったとしても、〇〇社に行くつもりです。しかし、私の後輩でJTにとてもマッチする者がいますので、ぜひ会ってください』といわれたこともあります。面談を重ねることで、JTという企業への理解がご自身なりに深まったということでしょう。このようにいろいろな出会いと出来事があるので、採用活動はとても面白いですね」

妹川氏は、こうした活動の背景について次のように話されます。
「個々人を会社に合わせるのではなく、会社が個人に合わせる。企業にこの土壌があってこそ、価値の創造を行う『人財』が次々と生まれ、変革、つまり新しい価値の提供ができるわけです。JTはとても自由な会社だと思います。その実例が、会社ではなく個々人に合わせた採用であり、それを許容する風土です。そして『これが、嘘偽りのないJTの採用だ』と胸を張って言えますし、さまざまなシーンで実践しています」

妹川氏はさらに次のように続けました。
「障がいのある方は、いわゆる健常者とは異なる体験を数多くされています。それをマイナスと考えず、私たちに吐露してほしい。それを聞いた者一人ひとりに新しい気づきが芽生えると思います。さらには、会社のここを変えようという変化につながる。これはすぐにフィードバックできると思っています。実際、障がいのある方が配属された職場では、気づきの発展として、その方から『新しいバリューが生まれる』という受けとめ方に変わってきている。つまり『欲しい個性』と認めて受け入れる風土が醸成されるようになったのです」

絶え間ない変化・変革を志すJTの企業理念と、障がい者を含む「人財」採用の理念。この両輪は、今後も間違いなく価値の創造を加速させることでしょう。

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